からだになじむ
素材への注目

MPCポリマーという材料

それは生体の細胞膜と同じ『リン脂質構造』を持ち、高い親水性と生体親和性を持っています。
すなわち体内に入っても血液凝固などの体内反応が起きない特長があります。
この体に馴染みやすい特長を生かして、人工心臓やコンタクトレンズをはじめ、いくつかの分野で活用されている素材ですが、私たちは世界で初めて、人工股関節に応用することに成功しました。

図:生体の細胞膜、MPCポリマー

細胞膜を再現する!

関節軟骨に学び、細胞膜を再現する。

人工股関節のライナー部分に、MPCポリマー処理させることにより、人の軟骨の表面に非常に近い『合成リン脂質』を作り出します(以下、MPCポリマー処理されたライナーを、アクアラライナーと呼ぶことにします)。
これは生体と非常に近い成分でできているため、細胞膜を再現するように、体内で安定して働くことが期待されます。

図:骨の断面、人工股関節の断面

体内の水と、
なじみやすい!

MPC処理をすることにより、非常に水になじみやすい親水性にかわります。

MPC処理されたライナーは、水をはじく『疎水性』から、非常に水になじみやすい『親水性』にかわり体液中では薄い水の膜をはるようになります。

図:MPC未処理の場合、MPC処理の場合(疎水性を親水性に変える)

動きがよりスムースに!

水を含みやすいMPCポリマー処理で、
潤滑の良い関節面に。

水になじみやすい、MPCポリマー処理で関節の動きが非常にスムースになります。
これは、水を挟んで摩擦面どうしが離れているので、摩擦抵抗が大幅に低減するしくみです。

潤滑の良さで摩擦抵抗が大幅に低減!

図:MPCポリマー処理

MPC処理の比較動画

左:MPC未処理のライナー、右:アクアラライナー

参考文献:Moro T, Takatori Y,Ishihara K, Konno T,Takigawa Y, Matsushita T, Chung UI, Nakamura K, Kawaguchi H.
Surface grafting of artificial joints with a biocompatible polymer for preventing periprosthetic osteolysis. Nat Mater. 3(11), 829-36,2004.

摩耗も大幅に低減!

水を挟んで、直接関節面が触れないので、
摩耗も大幅に低減します。

図:15年経過した従来の人工股関節とアクアラライナー

  • 未処理のものに比べ、摩擦が1/10に低減する。
  • さらに、人工股関節シミュレーターによる1日5,500歩×15年相当の歩行実験では未処理の製品に比べて摩耗粉は99%減少しました。

これは、人工股関節シミュレーターという歩行試験機を使った実験の結果を示したグラフです。15年相当の歩行をさせてみると、MPCで処理していない従来のライナーは、すり減って重さが減っていきますが、MPCで処理したライナーは減りません(水を吸って重さが増えています)。

図:15年相当の歩行をした従来の人工股関節とアクアラライナー

Aquala、それは…

人工股関節の長寿命化という新しい幕開けを期待する、日本発の技術。