BIOCERAM AZULとは

BIOCERAM AZULの開発スタートは2000年にさかのぼります。その当時既に製品化が実現していたジルコニアをベースに「強度2000MPaを目指す」を合言葉に開発を進めました。ジルコニアは他の素材と比べて強度に優れ、患者さんに安心して使用していただける製品として当社だけが製品化に成功し、現在に至るまで10年以上国内で市場展開されています。このジルコニアをベースに配合の調整と試作品の試験を何度も繰り返すも、なかなか満足のいく品質が得られずにいました。

そんな中、2002年になり、発想を転換した新しいアイデアから開発は新局面を迎えることとなりました。それは、高純度アルミナをベースとし、ジルコニアで強化するというものでした。アルミナは当社がジルコニアに先立って開発した素材で、臨床での長期の安定性に優れた実績があります。このアルミナをベースとしたところ試験結果が良好で、これに勢いを得て開発は順調に進み、ついにBIOCERAM AZULとして製品化に至りました。

BIOCERAM AZULの優れた機械的特性と安定性の秘密は、その配合比にあります。研究に研究を重ねて得られたアルミナ8:ジルコニア2という比率は、お互いの長所をいかし、短所を補いあう最高のバランスを実現しています[図1]。

[図1] 材料の特性比較

BIOCERAM AZULは高純度アルミナの約2倍の強度とジルコニアを凌ぐ破壊靭性強度を有しています。BIOCERAM AZULは外部応力や衝撃に対しても強く、信頼性の高いセラミックスといえます。

項目 単位 BIOCERAM AZUL ジルコニア
(BIOCERAM ZR195)
高純度アルミナ
(BIOCERAM AL190)
4点曲げ強度 MPa 1400 1450 600
破壊靭性値(IF法) MPa・m0.5 4.5 3.8 3.4
硬度 Hv 1740 1400 1900

また、[図2]に見られるように、両素材が均一に混ざり合っていることも優れた機械的特性と安定性を発揮するポイントとなっています。
BIOCERAM AZULのジルコニア粒子は高いヤング率を持つ高純度アルミナ粒子に囲まれる形で、存在しています。そのため均一に分散されたジルコニア粒子の体液中での結晶相転移(低温劣化)の懸念は払拭され、さらに粒子径を微細にすることで、両素材のより均一な分散が可能となり、安定性と強度はさらに高まりました。

[図2] BIOCERAM AZULの結晶写真

アルミナとジルコニアの配合比率(8:2)。ジルコニア粒子の均一分散と微細な粒子径が厳密にコントロールされています。また右記のが示すとおり、ジルコニア粒子はアルミナ粒子に囲まれて拘束されて存在しています。

写真:BIOCERAM AZULの結晶写真

この粒子(配合比、均一分散、粒子径)をナノレベルでコントロールする技術を得たことで、極めて高い強度と靭性を実現し、その特性を長期的に維持することが可能となりました[図3]。

[図3] BIOCERAM AZUL材料強度の安定性

134℃飽和水蒸気雰囲気下に50時間曝露しても強度の低下は認められませんでした。また、ジルコニア結晶相の変化(正方晶から単斜晶への相転移)も認められていません。このことから、BIOCERAM AZULは生体内においても長期に安定であるといえます。

折れ線グラフ:BIOCERAM AZUL材料強度の安定性

また、従来の人工関節摺動用セラミック材料は工業製品として使用されていた一般産業用のセラミックス材料の転用であるのに対して、BIOCERAM AZULは医療機器である人工関節の材料として開発が行われました。そのため、添加物にも十分に気を配り安全性を考慮した材料設計としました。さらに人工関節用のセラミック材料として必要とされる特性を最大限に引き出すために、妥協を許さずに研究を重ねてきました。

写真:イメージ

セラミックスは、今も陶器を始めとする日用品から携帯電話や宇宙開発等の先端分野の製品に至るまで、人々の生活と産業にとって欠かせない素材です。このセラミックス素材を用いた技術の進歩には、理論だけではなく、長年の経験と人の感性も重要なファクターとなっています。セラミックスの持つ安全性と耐久性に着目し、当社が長年にわたり技術開発を行い、人工関節の材料として開発したBIOCERAM AZULには、日本の叡智が息づいています。

BIOCERAM AZULには、そのこだわりの原点に患者さんのQOLを高めたいという強い思いがあります。それが妥協を許さない製品開発につながりにつながり、結実したのがBIOCERAM AZULです。患者さんが再び元気よく歩くことができる、その感動を共有できることが何よりの喜びです。