第1回 Let’s Review Basic Procedure

写真:覚本 嘉美 先生覚本 嘉美 先生
覚本歯科医院
(栃木県小山市開業)
京セラ公認
POIインストラクター

写真:八木原 淳史 先生八木原 淳史 先生
ファミリー歯科医院
(茨城県古河市開業)
京セラ公認
POIインストラクター

はじめに

世界でオッセオインテグレーションタイプインプラントの普及が始まって半世紀が経とうとしています。過去を振り返れば、インプラントの歴史はある意味臨床家による試行錯誤の繰り返しでした。そういう過去をご存知の先生方も多いかと思います。

その中で、京セラ社のインプラントシステムは、バイオセラム時代を含めると、日本でも有数の歴史を持っています。そこには、先人たちの開発に向けたたゆまぬ努力の結果により、今日の確立されたインプラントシステム、POIEXが存在します。日本人を含めたモンゴロイドの顎骨は薄く、小さく、そして骨量も乏しく、さらに粘膜組織も脆弱の傾向がありますが、POIEXシステムはこのことを考慮して開発されているため、日本国内においては大変に使いやすい、安全なシステムとの評価を得ています。日本国内のシェアもトップクラスであることが、その有用性の高さを物語っています。

しかし、その優れたシステムも、臨床的に正しく診査と診断を行い、指定された手順を順守しなければ、かならず不具合が生まれます。ましてや、インプラント治療は歯科医療における先端分野です。まずすべきことは、皆さんが最新のインプラント情報をたえず学ぶこと、工夫を重ねる臨床経験、そこにPOIEXシステムを適正に用いることで、良い結果が生まれます。「省略する」とか「面倒くさい」という気持ちは、臨床では存在しません。

幸いにしてPOIEXシステムでは、診査診断やインフォームドコンセントに活用できる優れたツールが用意されています。さらに実際の処置においても、的確な情報を得るための機器と安全な術式を揃えています。術後メインテナンスの際にも、患者さんへ情報提供することが、後のトラブル回避に役立ちます。これらは最終的に、私たち術者のストレス軽減につながります。

そこで「もう一度、基本手技を確認しよう」と題し、トラブル回避のポイントを解説いたします。第1回目は、「診査・診断」です。

1. Medical interview 「患者さんとの関係を大切にしましょう」

皆さんのオフィスに、メインテナンス等で通っている馴染みの患者さんが来院されました。今回の目的は欠損補綴だったとします。こういったケースは、すでにお互いの信頼関係が構築されていますので、インプラント補綴を含め様々な提案が可能です。

しかし、まったく初めての患者さんが、世の中に氾濫したインプラント情報を鵜呑みにして飛び込みでやってきた時、これは注意が必要です。どんな考えを持っているのか、職業、生活背景、医学的既往歴など、様々な情報が不明です。もちろん、多くの患者さんが、きちんとした考えのもとに来院されていると思いますが、時には意思疎通の難しい方もいらっしゃいます。こんな時、先生方のオピニオンをご理解いただくためのコンサルテーションは不可欠です。インプラント治療は、その患者さんと一生のお付き合いが始まります。信頼関係を築くことは、最初のステップと言えるでしょう。

2. Informed consent and Compliance 「説明と同意、そして必ず約束をしましょう」

では、インプラント治療を希望する患者さんと、何を最初にお話したらいいでしょうか。大きく分けると二つあります。ひとつは「インフォームドコンセント(InformedConsent)」。もうひとつは「クリニカル・コンプライアンス(ClinicalCompliance)」です。前者は皆さん、よくご存知かと思います。「説明と同意」これは治療と予後に対するアドバンテージ・リスクの話です。インプラント治療のもたらす恩恵を十分説明する一方で、診査診断と全顎治療の必要性、処置に伴い起こりうる合併症や偶発症について話すことになります。

写真:図1 インプラントハンドブックと患者用小冊子インプラントハンドブックと患者用小冊子

ここで役立つのが、京セラから販売されている「インプラントハンドブック」「患者用小冊子」(図1)です。インプラント治療の体験談や、京セラという信頼ブランドについても解説があるため、目を通した患者さんは、必ず安心感を持ってくれるはずです。私たちが口頭で説明するよりも、ビジュアルで示されたほうが、患者さんは納得してくれます。

写真:図2 POIEX3倍模型と患者説明用ベース模型EXPOIEX3倍模型と患者説明用ベース模型EX

模型の活用も有効です。「POIEX3倍模型」「患者説明用ベース模型EX」(図2)は、構造を立体的に理解でき、義歯との違いを明確に比べることができます。これらを大いに活用して、インプラント治療のメリットをお伝えしましょう。

では後者の「クリニカル・コンプライアンス」とは、何を話すべきか。日本語に訳せば、患者さんとの「約束」です。必ず約束したいのが、以下の3点です。

  • 歯周治療・全顎的補綴前処置の確約
  • 定期的メインテナンスの約束
  • 治療に対する保証・免責の契約

歯周病が及ぼす為害性については、文献的に明白です1)。歯周治療に付随する炎症の除去と力のコントロールは、すべての歯科治療における基本でもあります。もちろん、インプラント治療においても、最重要項目となります。(図3、4、5)

写真:図3

写真:図4

写真:図5臨床技術のステップアップには、規格性を求めた資料作りが第一に重要。

歯周動的治療の後には、メインテナンスも重要です。歯周病は、30歳代以上の8割が罹患しているといわれる世界的な慢性疾患です。Schou2)は、システマティックレビューの中で、「歯周炎に罹患しやすい患者は、インプラント周囲炎の発生頻度が高いため、インプラント治療の長期予後には危険を伴う。」と結論付けています。また、メインテナンスの診査で早期に不具合を発見できれば、トラブルも最小限に防ぐことができます。必ず定期的な通院を約束しましょう。

インプラントを含めた歯科治療の保証を設ける先生も、多く見かけるようになりました。しかし、咀嚼は毎日行うもの。まさに口腔とは、大変不安定な「生体」なのです。安易に長期の保証を設定するのは如何なものかと私は考えます。家電製品などは1年保証、自動車だってせいぜい5年保証なのですから、保証契約には十分注意が必要です。そして、必ず免責を説明しましょう。たとえば、メインテナンス通院を怠った場合はインプラント保証の適応外となるなど、お互いが納得できる保証内容を文書で交わすことが重要です。

以上の3点は、患者さんと必ず約束してください。インプラント治療とは、信頼と契約で成り立ちます。患者さんによっては、素人考えを押し付けてくる人もいるかもしれません。私たちが決してそれに流されることなく、正しい治療の流れへ導くことこそ、患者さんと幸せな関係を導く「鍵」となります。

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