技術

IBM社「システム360」用サブストレート

1966年にIBM社より受注したハイブリッドIC※用のアルミナ基板(サブストレート)2,500万個は、世界のセラミックメーカーとの競争入札の末に獲得した受注でした。

※ハイブリッドIC:セラミックスやガラスなどの基板の上に抵抗やコンデンサ、配線などを敷き、これにトランジスタやダイオード、半導体チップなどを搭載した集積回路

このIC用のアルミナ基板は、同社が新たに投入する第3世代の世界初となるメインフレームコンピュータ(巨大な組織の基幹情報システムなどに使用される大型コンピュータ。汎用コンピュータなどとも言う)の心臓部となる基板でした。同社ではこのICに独自の電子回路をパッケージするためのSLT(ソリッド・ロジック・テクノロジー)といわれる画期的な新技術を採用しましたが、そのIC基板として京セラのアルミナ基板が用いられたのです。

IBMにとっても最新の技術を盛り込んでいるだけに、その基板の仕様も細部に至るまで厳しく定められていました。例えば寸法精度は当時の京セラの技術では15ミリ角のもので公差が±1.5/100ミリであったのに対し、要求された公差は±0.5/100ミリ。このような仕様が分厚い本一冊にまとめられていました。
厳しい要求に対して稲盛は原料の調合から製品の検査に至る現場の仕事一切を監督し、毎日現場に入り、工程ごとに気付いた点を次々と改善し、従業員を直接指導していきました。
必要な生産設備や検査装置は思い切って購入し、毎晩遅くまで開発を続ける従業員ひとり一人に「遅くまでありがとう。明日もがんばってくれよ」と労いの言葉をかけ、皆が帰った後もひとり現場に残り、開発を続けました。

こうして開発からわずか7ヵ月でIBMからの合格通知を得たこの製品は、世界初大型汎用コンピュータ「システム/360」の心臓部に搭載されました。IBM最新鋭コンピュータに京セラのセラミック部品が搭載されたというニュースは、京セラ、またセラミックスに対する信用を、世界的に高めるきっかけともなったのです。

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極小のヴィアホール(層間配線接続穴)が開けられた15ミリ角のアルミナ基板