エピソード
躍進の画期となったIBMのサブストレート(1966年)
1966年4月、京セラにとって歴史的な出来事となるサブストレート(基板)の受注が決定しました。
その注文は、IBMからのもので、メインフレームコンピュータの戦略製品であった「システム/360」の心臓部、ハイブリッドICに用いられるものでした。受注数は2,500万個、金額にして1億4,000万円。当時の京セラ年間売上の4分の1に相当するものでした。
しかし、製作は難航を極めました。
寸法は11.5ミリ角、厚さ1.5ミリという小さなもので、アルミナの含有率や比重、吸水率、浸透性から抗折強度、並行度、平面度、メタライズ強度などの仕様が分厚い冊子に詳細に指定されていました。当時の京セラには、それらの測定装置すらなく、測定技術・機器の開発からのスタートでした。
社長に就任したばかりの稲盛が陣頭指揮に立ち、艱難辛苦の末にIBMから試作品の合格をもらったのは、受注から7カ月後。そして次は量産です。毎月100万個生産を目標に、80名のチームが24時間3交代で取り組み、ときには役員、幹部を問わず生産の応援に出ていました。
これにより京セラの技術、生産能力、品質管理力は長足の進歩を遂げ、同時にIBMに採用されたことによって信用度も高まり、それまであまりかかわりのなかった半導体・電機メーカーからも注文が寄せられるようになったのです。

写真
1枚目:IBM社大型汎用コンピュータ「システム/360」
2枚目:「システム/360」用サブストレート