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稲盛和夫 魂の言葉108

190822

『稲盛和夫 魂の言葉108』(宝島社/稲盛和夫=述、稲盛ライブラリー=構成)から、稲盛の言葉とその言葉に関連するエピソード・情報をご紹介いたします。

<稲盛の言葉>
「経営の目的は、経営者の人生観とも言い換えることができるでしょう。」(P66に掲載)

<宝島社の解説文>
経営者という立場になるにあたって、人間として正しいことを貫くということをその指針とした稲盛氏。そこからわかるのは、経営の目的は、なるべく高い次元に置くべきだということです。

事業で成功するには、経営に情熱を燃やし、エネルギーを高めていかなければなりません。金銭欲や名誉欲といった欲望のたぐいは、物事を成し遂げるためのたいへん大きな原動力となり、強いエネルギーを持っていると言えますが、しかしその半面、必ず後ろめたさがついて回るもの。この後ろめたさによって、実は逆にエネルギーが押し下げられることもしばしばです。

儲けたいというギラギラとした欲望だけで経営をしたとしても、一時はよいかもしれませんが、長い目で見れば決してうまくいかないものです。人間は放っておけば、必ず心のなかに欲望が湧き起こってきます。お腹が空けば、食欲という「欲望」が湧きますし、外敵に立ち向かう際には「怒り」がこみ上げ、嫌なことがあれば、「愚痴」をこぼします。仏教では、この欲望、怒り、愚痴の3つを、煩悩のなかでも最も強いものと位置づけ、「三毒」と呼びます。人間は放っておけば必ず、この三毒が心のなかに湧き上がってくるものなのです。この煩悩を抑えるためには、煩悩をきちんと見極め、意志の力で煩悩にまみれた己に克つこと、すなわち克己が大事なのです。

京セラは、はじめは28 人の従業員からなる、いわゆる中小零細企業でした。稲盛氏や従業員の努力が実り、会社は発展していき、年間の利益も5億円、10 億円と膨らんでいきました。すると傲慢な心がチラと湧いてきたこともあった、と稲盛氏は述べています。

「年間10億円の利益が出るのは、全部、私の考えた技術のおかげではないか。もっと給料をもらっても罰が当たらないのではないか」。そう思った矢先、「そうではない、決して自分の能力を私物化してはならない」と自らを戒めたそうです。自らに才能が与えられているのは世のため、人のために使うよう、神様が授けてくれたのだと思い直し、そのように考えて仕事を続けたと言います。
(『稲盛和夫 魂の言葉108』より)