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「徹底した経費削減を」1992年の講話より

200604

新型コロナウイルスによる先行きの見えない経済状況の中、今できる企業努力とはなんなのでしょう。今回は、バブル崩壊期の1992年、盛和塾で稲盛が話した「徹底した経費削減」に関する講話をご紹介します。

「私は、今回の不況は長引きますよ、そして深いですよという予想で注意をしてきました。やっと政府も『この不況は来年の春以降まで続く』と言っていますが、我々企業にとってはたいへんしんどい状態が続きます。
だから、もう不況が終わるのではないか、というふうに思うのは止めていただきたい。この不況はもっともっと長く続く、と考えてやっていただきたいのです。(中略)

経営というのは"予(かね)て"なのです。悪かったら悪いで膏薬みたいに貼ったりするものはない。(策と言えるようなものを)強いて挙げるならば、私は会社をつくってから今日まで、不況の時は絶好の好機と捉えてやってきたということだけです。しかしそれは好況の時に蓄えがあり、好況の時に充分に備えがしてあったから好機なのです。
不況の時は徹底して経費を削減する、それしかありません。その経費の削減の仕方もAという人とBという人、またはCという人とではそれぞれ違いますから、とことん経費を節減するのです。ここまでは、あそこまではというのではなくて、とことんやるのです。

またそうして削減した経費は、よしんば景気が良くなっても増やすのではありません。好況の時に経費を削減していきますと、その比率で後もいくわけですから、何も景気が良くなった時に経費を増やす必要はないのです。つまり損益分岐点が下がったままでいけるわけです。そして高収益会社になるのです。不況のときに全ての損益分岐点を下げる、つまり経費を下げるということをやっておけば、好況の時には高収益の会社になっていくのですから、これを好機と捉えなければなりません。

ぜひ皆さんも、この不況は長引くということで耐えていただきたい。もうすぐ景気が回復するのだと思って息を詰めていると、それが長引いた場合には続かなくなります。どうせ長くかかるのだと思えば耐えることもできます。秋ぐらいまでには景気が良くなると思って、財務面等の対策を十分に講じていなければ、不況が来年まで持ち越していった場合には、息が詰まってしまいます。いやいやもう1年や2年続くかも知れないと、1、2年続いても構わないような体制を今、組んでおくべきです」
(1992年10月 盛和塾神戸播磨合同例会講話より)

写真:1992年、神戸で講話する稲盛