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稲盛ライブラリーこの逸品  アメリカン航空アーピー会長より贈られたブーツ

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稲盛ライブラリー2階の「稲盛和夫の技術・経営」フロアの展示の最後に、1足の黒いブーツが置かれています。前側にはJALのロゴ、後ろ側にはアメリカン航空のロゴが縫い付けられています。このブーツは、稲盛がアメリカン航空の当時のジェラルド・アーピー会長に請われて同社の幹部社員に講演をした際に記念として贈られたもので、稲盛とアーピー会長、JALとアメリカン航空の友情の証ともいえるものです。

JAL再建のために稲盛が同社会長に就任した時、すぐに直面したのが米国の航空会社2社とのアライアンスの問題でした。JALは長くアメリカン航空と協力関係にあり、同社が中心となる航空連合「ワンワールド」に加盟していましたが、再建に際して多額の経済的支援をてこに「スカイグループ」への加盟を促すデルタ航空の働きかけにより、JAL内でも「スカイグループ」への鞍替えを支持する意見が多くなっていました。

稲盛は、損得ではなく「人間として何が正しいのか」という一点から議論をするよう呼びかけ、その後役員が数日間検討を重ねた結果、アメリカン航空との提携維持を決めたのでした。これによって両社の間には、短期的な損得勘定を越えて、思想や理念、経営姿勢に対する相互理解と共感に基づいた深い信頼関係が築かれたのです。

やがて、両社の間ではより緊密な提携関係の構築に向けたさまざまな取り組みが進められ、稲盛の著書『生き方』を読んでその哲学や人生観に深く共感したアーピー会長が、同社の経営幹部にもぜひ聞かせたいと願って講演が実現したのです。

このことは、「人間として何が正しいか」を判断基準とする、原理原則に基づく稲盛の哲学が日本の風土特質や日本的経営の中に限定されるものではなく、合理的で生き馬の目を抜くような国際ビジネスの中にあっても理解される普遍性を持ったものであることを証明する一つの事例であると言えるのではないでしょうか。

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