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『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』③

230605

『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(日経BP)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

皆さんの経営する会社が、新しい事業分野に進出したいと考えているとしましょう。その事業分野は、これまで携わってきた分野ではないため、専門の知識やノウハウを身につけた人材が社内にいません。しかし、どうしてもやりたいと強く願い、毎日毎日、頭のなかでシミュレーションを繰り返していくと、やがてそれは潜在意識にまで浸透していきます。

すると、ある日のことです。飲み屋で飲んでいると、隣の席から、見ず知らずの人物が話している声が聞こえてきます。それはどうも自分がやりたいと考えている分野のことで、話し声の人は、その専門技術者のようです。

思わず、「すみません。いまのお話をお聞きしていたのですが」と話しかけてしまう。それが縁となり、見ず知らずの人であったにもかかわらず、やがてその人に入社してもらうまでになり、それを契機に新規事業が展開していく。そういうことが往々にしてあるのです。

私にも、そういうことがありました。1983年夏のことです。まだ京都の一中堅企業でしかなかった京セラが国家的事業である電気通信事業への参入について検討を重ねていたとき、当時、私が副会頭を務めていた京都商工会議所にNTTの技術幹部が講演に来ました。この出会いにより、計画は一気に進捗していったのです。

本来なら、講師として招かれたその技術幹部との出会いも、そのまま通り過ぎてしまうような事象だったと思います。しかし、私の潜在意識のなかには、強い願望が浸透しています。そのため、一瞬の出会いを逃さず、素晴らしいチャンスを生かして事業を成功に導いていくことができた。私はそう思っています。

そのようになるまでには、繰り返し繰り返し強く思い続けることが必要です。全身全霊を傾けて顕在意識を働かせ続ける過程が必要になってくるのです。案件を軽く受け流し、適当に処理しているような状態では、決して潜在意識にまで浸透していきません。炎のように燃える願望を持ち続けることでしか、潜在意識を活用することはできないのです。
(『経営12カ条』「第3条 強烈な願望を心に抱く」p.72-73)