Facebookアーカイブ

稲盛和夫の生涯㉒ 「京セラの電子部品事業」

260511

京セラは、コンデンサ、フィルタ、コネクタ、水晶デバイス、センサなどを「電子部品事業本部」として展開しており、この分野への参入は1970年以降と比較的遅い時期でした。

実は、1959年の創業時より、稲盛の脳裏にはセラミックコンデンサのアイデアはありました。しかし、多数の先発メーカーがあり、いたずらにその競争に巻き込まれるよりも、創業間もない会社の地歩を固めることを考えて、京セラが強みとする材料や成形加工技術を武器に、各種絶縁部品の開発や機械部品、セラミック基板などの開発を優先させたのです。

電子部品分野の端緒は、それまで供給していたセラミック基板にスクリーン印刷で回路を印刷した厚膜回路基板で、その後、半導体パッケージの積層技術を応用したセラミック積層コンデンサ、水晶振動子などの発振部品、フィルタやレゾネータなどの圧電部品、コネクタなどに事業領域を広げてきました。

後発ゆえに苦戦を強いられてきた電子部品事業ですが、中でも水晶振動子事業は国内競合メーカー間の価格競争が激しく、特に厳しい消耗戦を強いられました。

必死で製造コストを下げ業界水準に追いついても、すぐにまたどこかが赤字覚悟で価格を下げ、業界水準が下がり、利益が出なくなってしまう。努力してコストを下げても下げても、業界水準に追いつかない。まるで「逃げ水を追う」ような状況が続く中、稲盛は「フェイズ(位相)を変える」ことの重要性について説きました。

「利益率が低く、苦しんでいる部門には、『価格競争が厳しいから』『市場の状況が悪いから』とその原因を外に求め、他社と同じような事をやって満足しているところがある。しかし、それでは決して高収益にはなれない。激しい生存競争の中で、各社とも合理化やコストダウンなどの経営努力を必死になってやっているのだから、他社と同じようなことを同じようにやっても高収益になれるはずがない。

高収益を実現しようとするなら、人工衛星を打ち上げる時と同じようなすさまじいまでのエネルギーを注ぎ込み、一気にフェイズを変える必要がある。

しかし、いったん高い利益率をあげる体制をつくりあげることができれば、人工衛星が軌道を回るのと同じように、それを維持し続けることはそう難しくはない。他社と同じような合理化に努めるという、定常エネルギーのみでいいのだ」

のちに、稲盛はこのことを「住む世界を変える」と言い換えています。

今まで「こんなものだ」と思っていた世界を捨て去り、一気に住む世界を変えるには一時的には非常に大きなエネルギーと誰にも負けない努力が要る。しかし、それをしてひとたび突き抜けてしまえば、通常レベルの努力でその状態を維持できるようになる。それを実践してきたことが、稲盛が京セラを高収益に維持し続けてこられた理由の一つともなりました。

写真:京セラ初期の水晶振動子