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研究

第1回「稲盛和夫研究会」開催

2020年8月8日(土)、第1回「稲盛和夫研究会」が稲盛ライブラリーを事務局としてオンラインで開催された。


「稲盛和夫研究会」は、稲盛和夫研究の深化を図り、企業経営ならびに社会の進歩発展に寄与することを目的に、経営史や経営学をはじめとする各専門分野の研究者によって構成される学術研究会であり、宮本又郎・大阪大学名誉教授を会長、沢井実・南山大学教授を副会長として、以下の研究体制で発足した。

 

アーカイブ研究分科会
 宮本又郎・大阪大学名誉教授(座長)
 木村昌人・関西大学客員教授
 辻村優英・稲盛財団学術部

 

経営活動研究分科会
 沢井実・南山大学教授(座長)
 梅崎修・法政大学教授
 金容度・法政大学教授
 澤邉紀生・京都大学教授
 中島裕喜・南山大学教授

 

経営哲学研究分科会
 田中一弘・一橋大学教授(座長)
 北居明・甲南大学教授
 武隈晃・鹿児島大学教授
 崔裕眞・立命館大学教授

 

第1回研究会では、活動の目的を出席者全員で確認するとともに、「稲盛和夫」に関連する先行研究のレビューならびに稲盛ライブラリー所蔵資料の概況を踏まえ、分科会ごとに研究テーマについて活発な議論が交わされた。今後、研究の進捗に合わせて、研究発表会やシンポジウムの開催、紀要の発行などを予定している。
 

本研究会発足にあたり、稲盛は次のようなメッセージを寄せている。

(オンラインで代読)

   

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「私は、自分の経営とは、天が『知恵の蔵』を開いてくれたからこそ、できたことだと考えています。つまり、社員のため、社会のため、無心に経営に打ち込む私を天が憐み、経営の原理原則が詰まった天の蔵を開いてくれ、私はただ、その天が指し示す、経営のあるべき道を、素直に歩んできたに過ぎないと思うのです。

 

現在、私がそのように判断を下すにあたり、一つ一つ目を通し、ときに見解を記していった経営資料は、『稲盛ライブラリー』に全て保管されています。また、中小企業の経営者の皆さんに背中を押されるようにして、36年間にもわたり、自らの経営の考え方やあり方、さらには具体的な経営手法までをも説いてきた、膨大な盛和塾の記録も全て、『稲盛ライブラリー』に託しています。

 

それら私が残してきた資料は、経営を通じて、企業に集う多くの従業員、また社会に住まう人々の物心両面の幸福を追求しようとしてきた、私の人生と経営の記録でありますが、それは私個人や一企業に留めるべきものではないと考えています。

 

私が多くの人々や社会から支援をいただき、今日があるように、これからの日本、いや世界の産業界を担う経営者をはじめ、広く社会で活用いただくべきものと考えています。また、私自身が経営の現場で、実践してきたものだけに、経営に呻吟する経営者にとって、必ずや道標(みちしるべ)になるものと考えています。

 

しかし、社会で広く、また後世まで長く活用いただくには、膨大な資料を科学的に整理分類し、また分析研究することが必要になります。このたび発足する『稲盛和夫研究会』が、私が残してきた膨大な経営資料を、経営学はじめ幅広い学術分野で研究にあたる先生方の手で、広く社会に資するよう、活用いただきますなら誠に幸いに存じます。

 

可能な限り私の残した資料に触れていただき、私の経営の考え方、また具体的な経営手法を、学術的に研究、分析いただきたいと思います。それが、私が半世紀以上にわたり取り組んでまいりました経営を、個人の『奇跡』ではなく、経営に携わる全ての人々が活かすことができる『原理原則』とすることになるものと信じています。

 

現在、人類は、悪化する地球環境、対立を深める国際関係、頻発する地域紛争、拡大する所得格差、荒廃する倫理道徳など、様々な課題とともにあります。これらわれわれの前に立ち塞がる難題の根底には、全て際限のない人間の欲望があります。今後、人類は、利己の心に端を発した、悪しき欲望を抑制し、利他の心をベースとした、美しく善き価値観に転換していかなければ、滅亡の危機にあることを危惧いたします。

 

望むらくは、このたび発足する『稲盛和夫研究会』において、問題意識と志を共有する先生方の手で、私の経営資料をひもといていただくことを通じ、利他の心が持つ素晴らしい力を社会に提起し、未来の社会をよりよき方向に変革していく契機としていただきますなら、誠に幸いに存じます」

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写真:
左上=宮本又郎・大阪大学名誉教授、右上=沢井実・南山大学教授
左下=木村昌人・関西大学客員教授、右下=田中一弘・一橋大学教授