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「『稲盛和夫の実学』をひもとく―原理原則に則り、物事の本質を追究する―」 鹿児島大学工学部 京セラ経営学講座(2002年12月11日、2003年7月7日) 「『稲盛和夫の実学』をひもとく―原理原則に則り、物事の本質を追究する―」 鹿児島大学工学部 京セラ経営学講座(2002年12月11日、2003年7月7日)

常識に支配されない判断基準

常識とされるものが人の心をいかに強く支配するのかということを、いくつかの例で説明したいと思います。

かつて、「歩積み」が一般的に行われていました。企業が銀行で手形を割り引くたびに、一定率の預金を行い、銀行に積み立てていくというものです。これは、手形が不渡りを起こしたときの、銀行のリスクヘッジとして行われています。ところが歩積み預金は手形割引とともに積み上がるのみで、手形の割引残高を超えても解放されません。私は、それが納得できないと会議で発言しました。周囲からは非常識きわまりないと笑われましたが、その後、銀行の実質収入を上げるための方便に過ぎないとして廃止されました。いくら常識と言っても、道理から見ておかしいことは、必ず世間も認めるのです。

また、売上に対する販売費・一般管理費の割合にも常識と呼ばれる迷信があります。本来であれば、販売組織や販売方法によって、販売費・一般管理費は異なるはずです。にもかかわらず、競合他社も15%かかっているから、うちの会社も15%だと思ってしまう。「他社が15%なら、俺はもっと少ない費用で売ってみせよう」と、なぜ思わないのか。そのために、「なぜだ」という考え方をしなくてはなりません。

利益率でも、この業種でこの規模ならば税引後で何%という常識があります。そのような常識にとらわれてしまえば、利益はその水準にとどまります。賃金が上昇したときは猛烈な合理化により、その水準の利益を維持できますが、それ以上の利益は出せなくなるのです。その力を普段から出してもっと高収益の会社にすることもできるのに、うちの業種は何%ぐらいで精一杯だと思いこんでしまい、利益率は不思議なくらい動かない。常識がいかに人間のメンタリティを縛るかがわかります。

経営に限らず、研究開発の場合でも、人間のメンタリティが非常に大きく作用します。このことは、ぜひ頭においていただきたいと思います。研究開発を次々と成功させられる人は、常識にとらわれないメンタリティをもっているものです。

「鹿児島大学工学部 京セラ経営学講座(2002年12月11日、2003年7月7日)」要旨

人は何のために生きるのか
なぜ経営に哲学が必要なのか
人と企業を成長発展に導くもの
西郷南洲に学ぶリーダーのあるべき姿
『稲盛和夫の実学』をひもとく
アメーバ経営が持続的な企業成長をもたらす