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スペシャルコンテンツ#02 通信×B2B

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通信×B2B

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京セラ 通信の30年 #02 B2B事業をブーストさせる

京セラ通信、新事業開拓へのあくなき挑戦

KYOCERA | NewsPicks Brand Design

 京セラの携帯通信機器事業が、30周年を迎えた。1989年に携帯電話端末の第一号機を市場に投入して以来、京セラは「ユーザーのさまざまなニーズに応えること」を掲げ、ビジネスに取り組んできた。本連載「京セラ 通信の30年」では、京セラ携帯通信機器事業のこれまでの歩みと展望にフォーカス。第2回は京セラが近年注力しているB2B事業に着目し、その拡大の背景と戦略を聞く。

ICT導入問い合わせが6倍に

 各業界でデジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれる中、新たなコミュニケーションツールとして、ICT導入が急務となっている。

 新型コロナウイルスの影響もあり、テクノロジーを活用した社会のあり方や働き方にさらなる注目が集まっているのは周知の通りだ。

 スマートフォンやタブレット端末を販売している京セラも、ICT導入への企業ニーズの高まりを感じている。

 京セラ・通信機器事業本部の大内康史氏は、コロナ禍におけるB2B事業について次のように説明する。

 「コロナの影響もあり、タブレットやスマートフォンの導入についての問い合わせが昨年比で6倍に増えました。

 今年3月には、一社から2000台のタブレットの至急供給の依頼をいただいたことも。ニーズの急伸を感じています」(大内氏)

京セラ 通信機器事業本部 通信事業戦略部 第2法人ビジネスユニット責任者 大内康史

 こうした需要増大を受け、京セラは今年7月に新サービスをローンチした。それが、法人向けソリューションサービス「京セラモバイルサポート」だ。

 スマートフォンやタブレット端末の販売のみならず、導入から保守・運用までを、ワンストップでサポートする体制を確立した。

 「すでに多くの企業に採用いただき、現在もさまざまな業種のお客様と商談を進めています。

 フルパッケージで導入支援をするのはもちろん、国内にサポート拠点も有しているため、修理や配送などもスムーズに対応可能です」と大内氏。

京セラモバイルサポートとは? 京セラモバイルサポートとは?

 さらに、修理サービスの拠点である京セラ北見工場は、情報の機密性、完全性、可用性を担保する国際規格「ISO27001」を取得。セキュリティ対策の強化にも一層力を入れている。

 このような国内メーカーならではの『スピード感』や『安心感』が、顧客のニーズを捉えているようだ。

京セラはもはや「端末メーカー」ではない

 実はこれまで、京セラのB2B事業の中心は、通信会社を介したモバイル端末の供給・販売にあった。

 裏を返せば、端末を作る「メーカー」であり、企業への導入支援にはあまり注力する必要がなかったとも言える。

 そんな京セラが、ワンストップのICT支援を開始したのはなぜか。同じく通信機器事業本部の中園博喜氏は、ローンチの背景を次のように話す。

 「モバイルサポートの立ち上げ以前から、『端末を納品するだけではなく、導入のサポートもしてくれないか』とIT部門を持たないお客様からお問い合わせいただいていた、というのが理由の一つ。

 加えて、京セラの通信事業として、B2CだけでなくB2Bにも拡張しようと考えているタイミングでもありました」(中園氏)

京セラ 通信機器事業本部 通信事業戦略部 第2法人ビジネスユニット 事業開発課責任者 中園博喜

 そもそも、京セラの通信事業は1989年の設立以来、B2Cビジネスを軸足においてきた。

 携帯電話やタブレット端末を開発し、通信キャリアを介してコンシューマーに販売するモデルだ。そんな同社が、B2B事業の拡大へと舵を切る決意をしたのは2年前のこと。

 モバイルやタブレット端末の高機能化にも天井が見え始め、国内のコンシューマー向けの通信機器市場も飛躍的な成長は見込みにくい。

 さらなる事業拡大のためには、新たなビジネスチャンスを模索しなくてはならなかった。

 「今後も顧客ニーズに応えるためには、『端末メーカー』から包括的にデジタル化支援をサポートする『ソリューションカンパニー』への転身が必要だ、という方針に至りました」(大内氏)

最初の顧客が「教育業界」だった理由

 京セラがB2B事業の拡大に踏み切ったのには、もう一つの理由がある。

 それは、「京セラモバイルサポート」の立ち上げに先行して、2社にICTソリューションを提供し、手応えを得ていたことだ。

 この2社のうち、初めて京セラが支援したのが、未就学児や小学生および中学生向けに「タブレットを使用した通信教育」を提供する企業。

 京セラにその相談が舞い込んできたのは、2015年のことだった。

 「サービスを利用するのは、未就学児や小学生のお子様がメイン。ですので、とにかく壊れにくい、高耐久のタブレットを使いたい、と弊社にお声がけいただきました。

 とはいえ、通信キャリア以外のお客様に直接商品を販売し、サポートするのは初の試み。非常にチャレンジングでしたが、先方とも丁寧に対話を重ね、完成させていきました」(中園氏)

 実際に納入された商品は、「壊れにくく、安心して運用できる」とクライアントからも好評だった。

京セラのタブレットのサンプル画像

 その反響もあり、3年後には多数のファミリーレストランを経営する大手レストランチェーンからも声がかかる。

 先述の通信教育と同様に、ファミリーレストランには小さな子ども連れの家族が多く来店する。そこで、高耐久の端末を提供する京セラが候補にあがったのだ。

 「2019年の夏ごろ、レストランチェーンよりご相談いただき、同年の年末に商品注文用のタブレットを12万台ほど納品しました。

 現在は、グループ全店舗・約3000店で京セラの端末を使用いただいています。

 また、端末の各機能やアプリケーションの設定、キッティング、店舗への個別配送、運用・保守まで、ワンストップでサポートも行っていますよ」(中園氏)

 教育業界・飲食業界へのソリューション提供を通じて、次第に法人向けビジネスにおける勘所をつかんでいった京セラ。

 現在は、医療や物流、建設など、特に耐久性や堅牢性の高い端末が必要とされる業界を中心に商談を進めているという。

 「端末の導入から保守までを一貫して支援するので、今まで以上にお客様の課題やニーズにリアルな肌感を持つことができる。その意味で、モバイルサポートは、メーカーである我々にとっても意義のある事業だと感じています。

 業界ごとの多種多様なニーズを一つずつ拾い上げ、今後の開発やサービスに反映していきたいですね」(大内氏)

B2B事業、もう一つの「戦略」

 とはいえ、ソリューションサービスのみを強化していくのが京セラの目的ではない。

 通信機器メーカーとして、端末本体の技術や機能を磨き上げていくことも、ビジネスを拡大するうえで欠かせないミッションの一つだ。

 その筆頭格といえるのが、米国国防総省の耐久基準をクリアしたスマホ「DuraForce PRO(デュラフォースプロ)」シリーズ。堅牢性や耐久性を追求した、京セラ独自の技術を搭載している。

「DuraForce PRO(デュラフォースプロ)」シリーズ

 「DuraForceシリーズは、安全防災・建築土木・物流配送など耐久性へのニーズが高い業界を中心に導入されています。

 もともと米国市場向けに開発した商品で、現地の州・郡警察でもすでに導入されており、逆輸入する形で日本のお客様にも提供を始めました。

月に100件を超えるお問い合わせをいただくなど、多くの反響をいただいているタフネススマホです」(中園氏)

 DuraForceシリーズでの実績をもとに、京セラは「社会インフラを支える通信事業」としてミッションクリティカル市場への進出にも力を入れている。来春から実用予定の「MCAアドバンス」端末もその一つだ。

MCAアドバンスは、一般財団法人移動無線センター(MRC)が来年4月よりサービスを提供する、国際的に標準化されたLTE技術適用の共同利用型自営無線システム。

公衆網とは異なる自営のネットワーク構築により、自然災害などの緊急時や非常時に公衆通信網が輻輳(ふくそう)した場合でも、安定した通信の提供が可能だ。

さらには優先制御設定によって、重要度の高い通信が途切れにくくする仕組みを持つ、ミッションクリティカル通信システムとして注目されている。

MCAアドバンスとは?

 「MCAアドバンスを国内に導入すべく、MRC社と検討を開始したのが2015年のこと。

 事業企画の初期段階から参画し、技術検証を行うための『実証実験機』を提供するなど、約5年をかけて、クライアントと実用化に取り組んできました。

 我々はサービスを通して、非常時やトラブル発生時はもちろん、常に地域社会に安心・安全を提供していきたいと考えています」(大内氏)

 もちろん、「MCAアドバンス」や「DuraForce PRO」シリーズにも、先述の「京セラモバイルサポート」が適用可能だ。

 堅牢性・耐久性の高い自社の商品と、導入サポートからリサイクルまで一貫したソリューション。このかけ合わせが顧客に対する京セラの提供価値であり、「端末メーカー」から「ソリューションカンパニー」へのトランスフォーメーションプランの一つなのだ。

京セラ通信、新たなステージへ

 冒頭で紹介した通り、京セラの携帯通信機器事業は30周年を迎えた。安定した成長を遂げてきたにもかかわらず、さらなる挑戦の道を選ぶのはなぜか。

 最後に、率直な質問を投げかけた。

 「時代の風を捉えつつ、事業に新陳代謝を起こさなくては、企業は衰退していってしまう。

 ですから、お客様のニーズをくみ取り、進化を続けていかなければという気持ちが常にあります。

 これは、創業者の稲盛や社長の谷本も各所でお話ししていることですが、京セラのカルチャーによるところが大きいかもしれませんね」(大内氏)

 本記事では、企業向けのソリューション支援事業にフォーカスをあてた。ただし、京セラ通信のB2B事業の戦略はそれだけではない。

 5GやIoTなど新たな通信技術の普及が予測される中、デジタルを起点にした『社会システムの構築』にも、京セラは注力しているという。その詳細については、連載後半でレポートする予定だ。

 事業スタートから30周年を迎えた今、次なる成長の軌跡をどのように描いていくのか。京セラの通信ビジネスは、新たなステージに突入しようとしている。

(制作:NewsPicks Brand Design 取材・文:高橋智香 編集:大高志帆 撮影:露木聡子 デザイン:堤香菜)