セミナーレポート 

2018年11月28日

その新製品のような明快さ。
“京セラのIoT”の方向性を描く講演に。

多様なお客様を支える
手のひらサイズのセルラーIoT

通信機器事業本部 通信事業戦略部長 能原 隆

2018年10月31日(水)開催

京セラ株式会社は「第5回IoT/AIビジネスカンファレンス」において、当社のIoT新製品やIoTソリューションを展示・紹介するとともにセミナーを実施しました。さまざまな事業分野でIoTの導入が進む中、顧客企業の実情を目の当たりにし、新発想のデバイス開発に至った経緯とその製品を解説。さらには京セラのIoTのこれからを語ったセミナーの内容をダイジェストでレポートいたします。

モジュールだけでは生まれてしまう“お困りごと”

セミナーの前半、能原が語ったのは、タイトルにもある「手のひらサイズのセルラーIoT」2製品を開発するに至った背景です。京セラの通信モジュール事業は2005年に車載通信モジュールを商品化して以降、2007年からは産業機械向けのモジュールも展開しながら実績を残してきました。近年では、コネクテッドカーやIoTといった産業分野の変遷に伴ってさらに出荷数量が伸びています。

このような状況から京セラでは当初、通信モジュールの開発・供給によってIoTに貢献したいと考え、LTE Cat.M1(LTE-M)の通信方式に対応したセルラー系の通信モジュールを昨年に製品化。しかし、これをさまざまなお客様にご紹介していく中で、いくつか問題があることが分かったと能原は言います。

モジュールは、お客様の製品や機器のどこかに組み込まれるものです。そうなると、お客様には無線設計やアンテナ設計、さらには公的認証の取得、回線の獲得、キャリアの認証試験なども必要となります。これがお客様にはお困りごととなってしまいました。しかし、そこから「もしかしたら別の価値を提供することができるのではないか」という考えが生まれます。これが、京セラのIoTビジネスのコンセプトへと発展していくこととなるのでした。

京セラのIoTは「コネクティングサービス」へ

今後、いろいろな分野でさまざまなモノがネットワークにつながっていく中、これらのモノやサービスを供給する企業の多くが無線通信技術をあまり持っていません。京セラではずっと通信端末事業を展開してきたことから「モノをつなげる」経験値があり、車載モジュール事業における信頼などもあります。そこで、京セラのIoTビジネスをモジュールの提供だけでなく、お客様がお持ちのモノやサービスのネットワーク接続を支援する「コネクティングサービス」と位置付け、事業コンセプトとしたことを能原がお話ししました。

また、この支援を「サービスのIoT化」「自社製品のIoT化」「生産現場のIoT化」と大きく3つの領域に分類。1989年から30年ほど携帯端末を開発してきた経験をバックボーンに、多層基板を使って小型化するシステム技術や、外装・筐体設計の技術、ミドルウェアやアプリケーション開発における京セラならではの技術などを活用して、お客様のIoT化に貢献していきたいと述べました。

まずは2つの“手のひらサイズのセルラーIoT”で理想を具現化

そして講演内容は、セミナーのタイトルにつながる「IoTユニット」と「LTE-Mボタン」の話へ。まずはどちらも、京セラならではの“セラミック基板”を利用することで20×20mmという非常に小型なLTE Cat.M1対応モジュールを開発できたことによるものと説明しました。

さらに、各製品の魅力についても言及。「IoTユニット」は「オールインワン」と一言で表現し、タブレット菓子のケースほどの小さな筐体に、アンテナ・電池・7種のセンサーが入っていること。そして、キャリアとの通信接続試験や公的認証の取得も完了し、このユニットがあれば、電源を入れるだけでセンシングが始まりクラウド上にデータを上げられることを、試験事例やライブデータも交えて紹介しました。

「LTE-Mボタン」では、ボタンを押すだけというシンプルな操作性と、押した情報だけが発信され、パブリッククラウド側でスクリプトを実行するという仕組みを説明。株式会社ソラコムの商品化例を紹介しつつ、リテールのリピートオーダーはもちろん、高齢者などでも迷わずに操作できることから見守りや訪問に、あるいはタクシーやデマンド交通の呼び出し手段になど、多様な使い方が期待できることをアピールしました。

IoTユニットの利用ニーズ

機器が取得したデータをクラウドに配信する使い方が52%。単体でセンシングした情報を移動しながらクラウドに送る使い方が32%。その2パターンで80%超に。

次の段階も、すぐそこに。継続的な貢献、そして進歩を

今後、通信データ量がいっそう莫大になると、システムはクラウドからエッジコンピューティングに移行していくと予想されます。データ処理も、環境認識・行動予測から、自律的な行動計画をするようになり、コンシェルジュ的な深い示唆を得られるようになるでしょう。能原は、これら次の段階がすぐに来ると考えており、顧客企業の皆様に継続的な貢献ができるようFar Futureを視野に入れた取り組みを行なっています。

さらに能原は、今後ロボティクスやAIの導入により、産業は労働集約型から資本集約型や知識集約型へ移行すると考えています。このことによって人々の生活は一新され、さらにそのインフラを土台とした新たな産業形態が生み出されるとも。「ロボティクスとAIをつなぎ合わせるものとしてIoTを続けている」と能原は語ります。IoTは、これらの変化に不可欠なピースであり、京セラでは情報をつなぐコネクティングビジネスを通じて、人類・社会の進歩発展に貢献したいと考えています。

最後に能原は「こういったことを常に意識し、忘れずにいることで、少しでも顧客企業やパートナーの皆様のビジネスに貢献できるよう誠心誠意取り組んでいきたい」と力強く述べ、セミナーを締めくくりました。

なお、カンファレンスでは会場の受付付近にIoTユニットやLTE-Mボタンの実物を展示。講演終了後には多くのお客様が足をお運びくださいました。

開催概要
イベント名:第5回 IoT/AI ビジネスカンファレンス
開催日:2018年10月31日(水)
開催場所:御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター
主催:株式会社リックテレコム

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