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稲盛和夫の読書②『坂の上の雲』

読書の秋です。稲盛の愛読書に司馬遼太郎の歴史小説『坂の上の雲』があります。およそ110年前の明治時代、ロシア帝国との海戦において日本側の連合艦隊参謀として活躍した主人公、秋山真之(さねゆき)について稲盛は次のように評しています。
「彼はさまざまな資料を駆使して、敵艦隊を率いる司令長官の性格や、約3万キロの航海を経た乗組員の心理や健康状態などを想定し、その全てを頭に入れていました。さらに日本海と周辺海域の気象も調べあげ、あらゆる条件下の戦闘をシミュレーションし尽くしてきました。その上で訓練や模擬戦を徹底的に行い、どう戦うべきかを追求し続けたのです。国の存亡を賭け、生きるか死ぬかという状況で二度とやり直しのきかない一大決戦に全精力を注ぎ、見事大勝利を収めた秋山は、心身共に疲れ果て、戦後は病に倒れ死んでいきます。
私は、誰にもできないことをやろうという場合に、少なくともそのくらいの心血を注いだ考え方がなければ、決して成功はしないと思っています。考え抜き、考え抜き、その中で状況に応じてさらに考え直し、そして国を挙げて、会社を挙げての願望を自分の潜在意識にまで浸透させていくという。その作業をしなければ、この凄まじいばかりの経済環境のなかで、世の中の人々の信頼に応えるような経営を続けていくことは不可能だと、私は思うのです」
※写真撮影 鈴木正美