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「稲盛ライブラリーこの逸品」- 第1回『生命の実相』

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「稲盛和夫」がぎっしりと詰まった空間、それが「稲盛ライブラリー」です。稲盛が歩んだ人生、また経営の足跡に始まり、その思想から社会活動に至るまで、あますところなく紹介されています。来館者は、その空間に身を置くとき、時間の立つのも忘れ、稲盛と対話することになることでしょう。

さて今後、そんな「稲盛ライブラリー」に展示されている、稲盛ゆかりの品々を、シリーズでご紹介してまいります。記念すべき第1回は、稲盛の思想の源流ともいうべき、書籍『生命の実相』です。

稲盛は、12歳のとき、結核の初期症状である肺浸潤と診断されます。当時、結核は死の病と恐れられ稲盛の叔父や叔母も次々と亡くなっていました。稲盛も幼いながらに死を意識し始めたとき、お隣に住む主婦から、宗教書『生命の実相』(谷口雅春著)を紹介されます。

少年稲盛が手にした『生命の実相』は、昭和7年1月1日発行の合本聖典と呼ばれ、黒革表紙で三方金の豪華本であり、稲盛ライブラリー1Fの生い立ちコーナーに、当時そのままの復刻版が展示されています。文章は、総ルビが振ってあるとはいえ、あくまでも大人向けの記述で、その内容のほとんどが病老死苦に悩む人々の救済物語であり、本来ならとても少年が読めるものではありませんでしたが、稲盛は貪るように読みふけることになります。このことからも、当時の稲盛の心境をうかがい知ることができます。

この本には、「この世の事象はすべて、心にあるものを呼び寄せたものだ」という思想以外にも、「善きことは必ず成功する」「人生は魂が勉強する学校」「利己の否定」などの記述があり、少なからず稲盛の思想形成に影響を与えたことが推察されます。
稲盛和夫という大河に注ぐ、ささやかですが、確かで清らかな源流がここにあります。

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