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「稲盛ライブラリーこの逸品」- 創業当時の稲盛の鞄

「稲盛ライブラリーこの逸品」、今回ご紹介するのは、京都セラミック創業当初に稲盛が使っていた鞄です。
当時の稲盛は、技術開発だけでなく、営業、製造など、実質的には会社全体を取り仕切っていました。営業では、自ら開発したサンプルをこの鞄に詰め込んで、あらゆる客先を回り市場を開拓していきました。競合他社が断った難しい注文でも「できます」といって挑戦することで、京セラは技術力を向上させていきましたが、時には納期遅れを出してしまいお叱りを受けることもありました。
ある得意先から、「京セラは何でも、『できるできる』と言って注文を取る。我々もできるというから、当てにして待っていても、なかなか納期通りにつくってこないではないか。できないものはできないといって、注文を取るな。我々が迷惑するから」といって叱られた。大抵の者なれば、返答に困り、謝るのが落ちである。
稲盛の返答は、即座に出てくる。「初めからできないと言えば、注文はもらえないし、あなたの方も困られるでしょう。また他社へ出されても、どこもつくれないでしょう。我々も初めてのものであり、難しいものですから、本当はやってみなければ分かりませんが、しかし我々は努力すれば必ずやれると思っているし、またどうしてもやらなければならないと思ってやっているのです。その心意気を買って欲しい。もし最初に断ればそれでおしまいになってしまいます。おっしゃる通り、納期には間に合わなかったこともありますが、多少遅れても、結局つくりあげてお納めしております。我々のこの熱意と努力を酌んで欲しいのです」と答えた。
こんな返答が即座に出るのは、機知があるからではない。常日頃から、その通りの考えで注文を取っているので、自分の考えをズバリ答え、ズバリ相手に通じ、相手は怒るどころか、感心しているのである。
(青山政次 著『心の京セラ20年』より)
数々の商談に立ち会ってきたこの鞄には、シワや傷のひとつひとつに営業を通じて培われた稲盛のモノづくりの精神が込められています。
※写真の鞄は、稲盛ライブラリー3Fのフィロソフィコーナーに展示しています。