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稲盛ライブラリーこの逸品-「水冷複巻蛇管」

京セラ創業時、なかなか注文がいただけず、他社ができなかったどんな注文でも「できます」と言って引き受けた製品の中、とりわけ困難な製品だったのがこの水冷複巻蛇管でした。
三菱電機から受けた磁器製の送信管冷却用蛇管の注文は、外径30cm、内径20cm、高さ60cmの大きな磁器円筒で、穴が二重らせん状にあいていて冷却水を通す構造でした。複雑な形状のため、技術力で定評のある碍子メーカーでも辞退した製品でした。
製造設備も技術もない中で、稲盛は手作りの設備と知恵で乗り切りました。特に苦労したのが乾燥工程。大型の粘土製品の乾燥は、温度と湿度を十分に調節しなければならないのに、そのような施設がなかったのです。そこで稲盛は、亀裂の入る両端を布で鉢巻きして縛りつけ、電気トンネル炉の下に置き、均一に乾燥させるため、一定時間ごとに回転させました。乾燥には時間がかかり、時として徹夜で製品のお守りをすることになりましたが、こうして問題を解決し、製品を作り上げました。
このような稲盛の執念は、当時の京セラ社員にも感銘を与え、「ネバーギブアップ」の精神を植え付けていったのでした。
写真:現品は稲盛ライブラリー2Fにて展示中