Facebookアーカイブ

心。人生を意のままにする力⑤

200225

『心。』(サンマーク出版)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

<稲盛の言葉>
京セラを興す前、私が京都の碍子メーカーでセラミックの研究をしていたことはすでに述べました。経営は赤字続きで給料の遅配は当たり前というオンボロ会社でしたから、研究設備もまったく不十分でした。
しかし、とにかく与えられた条件下で新しいセラミックの研究開発に取り組むほかはない。ひたすら目の前にある研究に没頭することにしたのです。

そのように仕事に全神経を集中させていると、心から雑念が消え、無心に近くなることがありました。修行僧が座禅の最中に「無」の境地にいたるように、思考の夾雑物(きょうざつぶつ)が頭からきれいに拭われて、まっさらな心の状態になるのです。
そんな澄みきった心でいるとき、ふとどこからか"知恵の言葉"ともいうべき「考え方」が浮かんでくることがありました。

すばらしい成果を上げるにはどうしたらいいのか、どのような心がまえで日々の仕事にあたったらいいのか――そもそも私の心の中にあった、そんな悩みや問題意識に呼応するかたちで、答えとなる知恵がひらめくのです。

そうして生まれてきたさまざまな考えや思いを、私は研究実験ノートの端に書き留めるのが習慣になっていました。
研究者から経営者になっても、その習慣は止むことはなく、日々の仕事の中で紡ぎ出された言葉や思考をノートに書き留めていきました。

このようにして研究者時代から続くメモに記された多様な内容が、のちに「京セラフィロソフィ」といわれる、京セラの発展を支える企業哲学の原型となりました。
それ以来半世紀以上にわたって、フィロソフィは私にとって経営という荒海を航海するための海図となり、また人生という道を歩みゆくうえで、正しい方角を示してくれるコンパスともなってくれた。それもまた、元はといえば「美しい心」の産物だったのです。(P59-60に掲載)