Facebookアーカイブ

宴席で学んだ、「過ぎたるもならず、足らざるもならず」

200907-2

9月6日は、「く(9)ろ(6)」(黒)と読む語呂合わせから「鹿児島黒牛・黒豚の日」として認定・登録されています。稲盛も焼肉やすき焼き、鉄板焼きなどの肉料理が好きで、懇親の場として焼肉店を選ぶこともしばしばありました。その様子は、同席した社員によれば、「いくつかのグループに分かれて着席すると、名誉会長(稲盛)は常に全員に気を配り、『あいつはあまり食べていないみたいだから面倒を見てやれ』と言われることがあった」「懇親会だと思って楽しみすぎると、『会の目的を忘れている』と注意された」というものだったといいます。 宴席で少し厳しいとも思える指導をする稲盛ですが、かつてこのように話していたことがありました。

(京セラ創業の恩師であった)西枝一江さんが、よく私を京都の祇園に飲みに連れていってくれました。私が疲れ果てていたり、仕事に悩んでいたりする表情を見て、「おい稲盛君、今日一杯飲みに行こう」と誘っていただき、お酒の飲み方を教えていただきました。

西枝さんはお酒がたいへんお好きで、私が横に座って、お猪口にお酒をつぎますと、「ありがとう」と言って、嬉しそうに飲んでおられました。飲み干されるたびに、私がまたつごうとすると、「そんなにせっついてついでくれたって、飲めるもんじゃありませんよ。お酒というのは楽しんで飲まなきゃ。そんなにつがなくていいから、あなたもこのおいしいすばらしいお酒を飲みなさい」と言われるのです。そして、今度は私も飲んでいますと、「たまにはつぎなさいよ」とおっしゃる。つぎすぎると「せわしない」と言うし、つがなければ「たまにはつぎなさい」と言う。また、「あんたも飲みなさい」と言われ、私が酔っぱらうと、「酒に飲まれてはダメですよ」と注意される。

つまり、過ぎてもいけないし、足らなくてもいけないという、人生にも通じる教えを、酒を飲むマナーを通じて教えていただきました。まさに私にとってはすばらしい人生の師でありました。(2009年11月4日 盛和塾中部北陸地区合同例会講話より)
焼肉の席で稲盛が社員に伝えた「一人ひとりに気を配り皆で楽しむ。しかし会の目的を見失うことはしない」というのは、稲盛が若かりし頃にお酒の飲み方を通して教わった「過ぎたるもならず、足らざるもならず」という人生の教えだったのかもしれません。

写真:すき焼きパーティを楽しむ稲盛(右)と西枝一江氏(右から2番目)