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『心。』中国語版 稲盛が寄せた序文

200924

昨年6月に発刊された稲盛の新刊『心。』(サンマーク出版)の中国語版が、今年5月に人民郵電出版社から翻訳出版され、増刷を重ねて現在40万部を突破しています。発刊にあたって稲盛は、すでに中国で400万部を超えるロングセラーとなっている『生き方』とともに、自らの人生観を伝える集大成であるとして、次のような中国語版の序文を寄せています。

『生き方』の中で私は、「人生の目的とは心を高めること、魂を磨くことである」という私の人生観を披瀝(ひれき)しました。その根底には、人生の成功も失敗も、すべては自らの心を純粋で美しいものに高められるかどうか、言葉を換えれば、「利他の心」を発揮できるかどうかに帰着するという私の信念があります。
それは、これまでの人生を通じて、私自身が体得してきた、よりよく生きるための実践哲学であり、時代が移り変わっても決して変わることのない真理であると信じています。そのことの大切さを次代を担う人たちに伝えたい、少しでも混迷する社会をより良き方向に変えていくことに寄与できるのではないか、そのような思いから、本書『心。』を著したと言っても過言ではありません。

このことは、日本と同様に、あるいはそれ以上に、現在の中国の皆さんにとっても大切なことではないでしょうか。中国は改革開放以来、急速な経済発展を遂げ続け、今では押しも押されもせぬ世界第二位の経済大国として、また国際社会を牽引する国家として存在感を増しています。

その一方で、急速な発展と同時に、現代文明が共通して抱える諸問題にも遭遇するようになっています。たとえば、地球環境の悪化や貧富格差の拡大、さらには倫理道徳の荒廃といった諸問題は、先進諸国と同じように、いまだ解決策は見出されていません。これらは私たちすべての現代人が直面している社会の病理であり、それを簡単に治癒できる特効薬はありません。
しかし、その根本を突き詰めるなら、自分だけよければいいという際限のない人間の利己の心に起因しており、今後、現代文明を存続させていくためには、この悪しき利己の心を抑制し、利他の心をベースとした価値観に転換することが必要です。

本書が、そのような時代の転換期を迎える中国の皆さん一人ひとりにとって、素晴らしい人生を送ることに資するのみならず、中国社会が調和ある発展を遂げていく一助となりますことを心より祈念申し上げます。
(『心。』中国簡体字版 序文より抜粋)