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経営問答シリーズ「社員の心をまとめるには」

稲盛は、塾長を務めていた盛和塾で、塾生である経営者からさまざまな質問、相談を受けてきました。今回より新しくスタートする「経営問答シリーズ」では、その内容をご紹介いたします。
1回目は、ある海外塾の懇親会での経営問答からです。
<塾生からの質問>「社員の心をまとめるには」
日本のマーケットが成熟してきたことから、海外に進出し、さらに拡大するために大きな工場をつくりました。
一生懸命に営業に出て、1カ月のうち海外の工場にいるのは1週間という生活をしています。そうした中で、社員と私の心が離れていくような気がして怖くてなりません。信頼して日本から連れてきた社員も辞めることになってしまいました。物理的にいつも社員のそばにいられないとき、どうやって社員の心をまとめていけばよいのでしようか。
<稲盛のコメント>「自分の分身をつくる工夫をする」
どんな小さな会社の社長でも、営業その他で飛びまわらなければなりませんから、会社にいる機会は少ないと思います。それでも、短い時間を使って社員によく話をして、自分の片腕になるような人たちを育てていかなければなりません。たいへんなことですが、私も創業の頃から自分一人ですべてのことをしていたので、時間もなく飛びまわっておりました。
本当に手がまわらないし、自分は会社にしょっちゅういることもできない。困り果てて、悩みに悩んでいたときに思ったのが、孫悟空のように自分の毛を抜いてプッと吹けば、自分の分身が何人もできるという魔法のようなことでした。それほど人材がほしい、自分の右腕になる人がほしいと思い詰めていました。
しかしながら、孫悟空のように自分の分身ができるはずもありません。それならば、必死になって自分の部下を育てていこうと、私は思ったのです。
うちの会社に入ってくるのは、学校も出ていないような人でした。その社員たちをつかまえて、私の片腕になってほしいと思って、一生懸命に話し込んでいきました。
ところが不思議なもので、そういう人でも2年3年と月日がたつと、私の気持ちをわかってくれるようになったのです。一生懸命に仕事をしてくれるようになりました。中学卒業で入社したある人は、その後京セラが大きくなったときに事業部長にまでなっています。大学卒業の社員がたくさんいる中で、そういう人がいくらでもいるわけです。
どうしても自分は会社にしょっちゅういることができない。だから、自分の片腕になって会社を守ってくれる人がほしい。そういう人がどうしてもほしいと心から思えば、どんな工夫でもできるのです。
写真:塾生の質問に耳を傾ける稲盛