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稲盛ライブラリーこの逸品「心の構造図」

稲盛ライブラリー3階「思想のフロア」に、稲盛直筆の「心の構造図」が展示されています。(写真)
稲盛は、心の中にある利己的な自我(本能、煩悩)を抑え、利他的な良心、理性が出るようにすることが「心を高める」ことだと述べています。心の多層構造を表したこの図では、中心に愛と誠と調和に満ちた「真我」があり、その外に食欲や闘争心といった、命を維持するために必要な「本能」があります。さらに本能は、喜びや怒りなどの「感情」に包まれています。そして、その感情の外には、見る、聞くといった五感に伴う「感性」があり、一番外側に「知性」が存在していることを示しています。稲盛は利己の心を抑え、利他の心を発揮することの大切さを、この図をもとにして次のように説明しています。
人間は、どうしても利己的な自我が過剰になりがちですから、自我を抑えるということが大切になってきます。そのため、仏教では「足るを知る」ということを教えます。「そんなに欲張らなくてもよいではないか」、「そんなに『オレがオレが』と言わなくてもよいではないか」などと、利己的な自我を抑えていくのです。
そのようにして自我を抑えること、つまり真我の周囲を取り巻いている自我の皮を薄くしていくことに努めていきますと、高次元の真我、つまり良心、理性というものが出やすくなってきます。
そして、判断の基準を真我、つまり良心や理性に置き、それによって判断できるようになっていきますと、誤った決断をするようなことがなくなるのです。欲むき出しで、つまり本能や感情など自我にもとづいて判断をするから、ろくでもない結果を招いてしまうのです。
このようにして、低次元の自我、つまり欲呆けした自我を抑えていくということが、人間性を高めていくための修行であり、「心を高める」ということにつながるのです。低次元の自我をできるだけ抑え、高次元の真我、つまり美しい慈悲にあふれた利他の心というものが出るように、自分をトレーニングしていくこと、それが「心を高める」ということなのです。
(2010年 盛和塾第18回全国大会講話「経営のこころⅢ」より)
写真:展示品「心の構造図」(自筆)