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経営問答「優秀な社員の退職」

201130

稲盛は、塾長を務めていた盛和塾で、塾生である経営者からさまざまな質問、相談を受けてきました。本日は、リーマンショック後に受けた「優秀な社員の退職」に関する質問を取り上げます。

<塾生からの質問>
「優秀な社員が辞めていきます」
最近、私の会社も(リーマンショックの影響のため)非常に厳しい状況で、福利厚生や給与の面で、厳しい条件を社員に受け入れてもらっています。そうした中で、優秀な社員が離れていくという現状があります。
当然、その責任は私にあるのですが、他の社員の「優秀な社員がなぜ辞めるのか」という声に対して、「優秀な社員とは、会社に残って苦楽を共にしてくれる社員である」と答えています。しかし、こうした私の考えに異議を唱える社員もいます。塾長(稲盛)はどう思われるのでしょうか。

<稲盛のコメント>
「残ってくれた社員こそが優秀な社員」
こうした厳しい経済環境になってくると、ますます会社経営というのは厳しくなってきます。経費は節約しなければならないし、場合によってはボーナスも減らさなければなりません。極端にいうと、給料も減らさなければならない局面になってきます。
厳しい状況になってくると、会社の中で優秀だと思った人が辞めていくということは、あなたの会社だけではなく一般の会社でもよくあることです。賢い人や先の見える人はたちまちに辞めていきます。そして、それを見た社員が不安に思うことはよくあることです。

そうした中で、あなたが「苦楽を共にし、この苦労を一緒に耐えていこうと残ってくれる社員が優秀だ」と言われるのは、そのとおりで正しいことなのです。
残ってくれている社員は、若干鈍だから残っているのかもしれません。しかし、あなたのおっしゃるように、そういう人こそ本当は優秀なのです。

ですから、そういう人を大事にすることです。ちょっと苦しい局面になったらさっさと辞めていく人は、いくら優秀であったとしても、決して会社のためになる人ではありません。
しかしあなたがそう言ってみたところで、他の社員は、「いや、優秀な人たちが辞めていくのは、うちの会社に魅力がないからではありませんか。何とか優秀な人が残ってくれるような会社にしなければなりません。社長、あなたがおかしいから、優秀な人が辞めていくのです」と言うかもしれません。そうしたら、こう堂々と言われたらいいと思います。
「それは、私が至らないから優秀な人が辞めていくのかもしれない。私もこれだけの能力しかないのかもしれない。けれども、私を信頼してついてきてくれる人がいる以上、私は勇気が生まれてくる。私は残った人たちを大事にして、この会社を盛りあげていこうと思う」と。