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大規模集積回路(IC)用セラミック多層パッケージの開発と大河内記念生産特賞
大河内記念生産特賞授賞式
1970年に開発された大規模集積回路(IC)用セラミック多層パッケージは、事業の大黒柱として2000年頃まで京セラの急成長を支えてきた製品です。
ICの使用には、その微細な配線を衝撃やほこり等から保護する「入れ物」が必要になります。そこで使われるのがセラミックス製のICパッケージです。セラミックスは熱の放散性や気密性、耐久性の高さから、特にLSI、VLSIなど集積度の高いICのパッケージとして広く用いられてきました。京セラはICが発明された直後よりこのパッケージをつくり、インテルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、モトローラなど世界的な半導体・電機メーカーに供給してきました。
このパッケージは金属導体の配線を印刷した二層から十数層の積層した薄いセラミックスを一体焼結するというもので、生産には「セラミックスがうまく付かない」「金属の配線だけが熱で燃えてしまう」など多くの技術的な困難がありました。開発時には技術者を総動員し、開発責任者は何人も入れ替えて、発想や着眼を変えながら苦難の末に量産化技術を確立したのです。このようにして量産に成功したICパッケージは国内外の半導体メーカーに提供され、その後の半導体産業の飛躍的な発展を支え続けてきました。
この量産化技術の開発によって京セラは、1972年3月に第18回大河内記念生産特賞を受賞しました。この賞は日本の学界や産業界に大きな業績を遺された大河内正敏博士の「生産のための科学技術の振興」という遺志を実現するために設けられた賞で、生産工学・生産技術分野では最も権威ある賞といわれています。京セラの受賞は、ICパッケージの量産化成功が日本の生産工学・生産技術上の優れた成果であると認められたものでした。
ICが開発された当時、米国の大手セラミックスメーカーはその将来性を確信できず、大規模な設備投資を躊躇しました。一方稲盛は、ICの秘められた可能性を直感し、大胆な設備投資とセラミックパッケージの開発に乗り出しました。その成功は稲盛の技術者、経営者としての先見性と、それを誰にも負けない必死の努力で実現した多くの社員の奮闘の賜物であり、誇らしい栄誉だったのです。
写真
1枚目:大河内記念生産特賞授賞式
2枚目:大規模集積回路(IC)用セラミックパッケージ
3枚目:賞状