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稲盛和夫の好きな本

210426

稲盛を多面的にお伝えする新たなコーナー「稲盛和夫の好きな〇〇」を、今月からシリーズでお届けします。
第一回は、稲盛の好きな本『史上最強のリーダー シャクルトン』(PHP研究所)をご紹介します。本書は、イギリスの有名な探検家アーネスト・シャクルトンの南極探検を詳細に描いたもので、稲盛は彼のリーダーシップに感動し、次のように述べています。

「シャクルトン率いる探検隊は想像を絶するほどの災難に襲われます。探検隊28名を乗せたエンデュアランス号が流氷に閉じ込められ、壊れて沈没してしまうのです。南極大陸の手前で船を失った彼らは、十分な装備も食料もないまま、流氷上に取り残されてしまいます。 この絶体絶命のピンチのなかでも、シャクルトンは強いリーダーシップを発揮し、ともすれば絶望にさいなまれる隊員たちを励まし、希望を与え続けました。

まず、氷上にキャンプを張り、少なくなった食料をできるだけ温存し、アザラシやペンギンを捕獲し、アザラシの油を燃料にしながら命をつないでいきます。 そのうち、キャンプを張っていた浮氷が二つに割れると、シャクルトンは氷上を捨て、全員で救命ボートに乗り込み、暴風が吹き荒れる南極の海のなか、上陸できる島を目指していくことを決断します。エンジンもなく、ボートとオールだけで、マイナス40度近い寒さのなか、凍てつく水しぶきに全身を濡らしながら、あるともわからない目標に向かっていくその姿は、まさに悲壮そのものです。 しかし、そのような悲壮感は微塵も見せず、シャクルトンは隊員を率いて前進し続けていきます。島から島へ、海峡を越え、山脈を越えていきます。そしてついには、22カ月間、極寒の地で生き延び、隊員28名の誰ひとり欠けることなく生還を果たします。

南極大陸横断という試みそのものは失敗しますが、死に直面しても決してあきらめることなく、常に自らの可能性を追求するその姿勢は生涯変わることがなかったといいます。このように失敗を恐れず未踏の地を目指して挑戦し続けた先にこそ、他の誰にも真似できない偉業があるのだと思います。

探検家だけではありません。人類の歴史を変えるほどの発明発見をした偉人たちも、自らの無限の可能性を信じ続けたからこそ、不可能と思えるようなことを成し遂げることができたのだと思います。そして、その結果として、人間は進歩し、社会は発展し続けていきます。はじめから『できない』とあきらめてしまえば、永遠に進歩することはありません。」(『考え方』大和書房より)

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本書の裏帯には、稲盛の次の推薦の言葉が寄せられている。
「苦難を乗り越えてこそ、人間として磨かれる。本書には、希望への力がある」