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稲盛和夫の好きな歌

210531

新コーナー「稲盛和夫の好きな〇〇」、第2回は稲盛の好きな歌『人生の並木路』(佐藤惣之助作詞、古賀政男作曲)をご紹介します。この歌は、昭和12年公開の映画『検事とその妹』という、両親を亡くし助け合いながら生きてきた兄妹を描いた物語の主題歌でした。稲盛はラジオ番組に出演した際、この歌を引用して実の妹との思い出を次のように語っています。

《人生の並木路》
泣くな妹よ 妹よ泣くな 泣けばおさない 二人して 故郷をすてた かいがない
遠いさびしい 日暮れの路で 泣いてしかった 兄さんの 涙の声を わすれたか
雪も降れ降れ 夜路のはても やがてかがやく あけぼのに わが世の春は きっと来る
生きてゆこうよ 希望に燃えて 愛の口笛 高らかに この人生の 並木路

私が大学を卒業したのは昭和30年でした。戦争に負けて、郷里が焼け野原になってから、10年しかたっていないときでした。そして京都で就職して寮に入ったのですが、食事も設備も何もないところでしたから、自炊をしていました。
そのときに、二つ下の妹が勤めていたデパートを辞めて、「兄ちゃんのおさんどんの手伝いをするんだ」と、京都に来てくれたのです。寮の近所には明治製菓さんがあって、キャラメルをつくっていました。妹は私の寮に泊まりながら、お昼はそのキャラメルの包装工をしていたのです。

私は会社で夜遅くまで研究をしていました。ですから妹が朝と夜の食事をつくってくれて、1年半ほど私の面倒をみてくれました。私は妹が頼りだったし、妹も私が頼りという関係だったものですから、この歌を聴くと、そのときのことがまざまざと思い出されてくるのです。
(2004年10月7日「わくわくラジオ」NHKより)

写真:七五三の妹とともに(左上:和夫8歳の頃)