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どの山に登るのか -松下幸之助氏との対談-

210607

今を去ること42年、1979年6月に発刊された月刊誌『Voice』(PHP研究所)誌上に、稲盛と松下幸之助氏との対談「借金するにも余裕を持って」が掲載されました。 当時、京セラは創業20周年を迎え、急成長高収益企業の若き経営者として注目を集め始めていた稲盛が、すでに経営の神様と呼ばれていた松下幸之助氏に臆することなく、持論を展開しています。

特に二人が共鳴したのが、企業経営を「山登り」に例えた場面です。
「われわれは『この山へ登るんですよ』という目的だけは、はっきりとさせなかったらいけない」という松下氏の発言に、稲盛は「この山へ登ると決めて、登る人を集めたんであって、勝手なことをするために集めたんではない。(中略)山へ登るためには、最低限のルールが要るんだと言わなければならない」と呼応しています。

後年、稲盛が経営における哲学の必要性を説くときに述べる「山登り論」がすでに見受けられます。経営における哲学の必要性を最も強く説いた、希代の新旧経営者の共感は、その後1989年、稲盛初の著書『心を高める、経営を伸ばす』(PHP研究所)の発刊にあたり、松下氏から贈られた、生前最後の推薦の言葉へとつながっていきます。
(松下幸之助氏との対談内容は、のちに『経営静談 松下幸之助対談集』(PHP研究所)に収められました。本書は稲盛ライブラリー5F図書コーナーにてお読みいただけます)

写真:対談が掲載された『Voice』と『心を高める、経営を伸ばす』