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五輪と稲盛和夫

1992年8月、バルセロナ五輪女子マラソンの会場となるモンジュイクの丘に建つスタジアムに、稲盛和夫の姿がありました。日本代表として出場する、京セラ陸上競技部の山下佐知子選手を応援するためでした。
マラソンが大好きな稲盛は、何としても現地で応援したいと、多忙なスケジュールをやりくりし、前日にバルセロナに入っていました。レース当日も、スタジアムを目指し、交通手段が制限される中、稲盛は慣れないシャトルバスに揺られ、モンジュイクの丘を半袖シャツをまくり上げ、汗だくになって登ったといいます。
また同時刻、旧京セラ本社の5階にある百畳敷きの和室は、深夜零時過ぎにもかかわらず、百人近い社員であふれかえっていました。クーラーがうなりを立てる中、モニター2台を取り囲むように、十重二十重に社員が座り込み、酒や乾き物がその隙間を埋めていました。稲盛と同様、何としても仲間を応援したいという社員の思いを会社が受け止め、「終夜営業の応援席」が用意されていたのです。
社員たちは焼酎がつがれたコップを手に、夏の夜が明けるまで、大声援を送りました。しかし、一番盛り上がった瞬間は、観覧席最前列で声援を送る稲盛の姿が、テレビに大写しになったときでありました。
レース結果は惜しくも4位入賞。メダルを逃したものの、稲盛がつくりあげてきた、京セラという企業の一体感、心と心で結ばれた関係を改めて実感する場となりました。
写真:京セラ本社にて山下選手を応援する社員たち