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カメラマンが見た稲盛和夫 有限会社LiVE ON カメラマン 菅野 勝男

210923

今月から始まる新しい企画です。
今まで、インタビューや活動記録など、多くの写真家の方々に稲盛を撮影していただきました。中でも特に印象深かった写真をご紹介し、その時のエピソードを撮影者ご本人に語っていただきます。
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この写真は、私が初めて稲盛さんを撮影した思い出深い写真です。
日経ビジネスの13週連続掲載記事での撮影でしたが、当日の朝は大雨。すでに決めていた撮影場所も変更を余儀なくされるかもしれないという状況でした。奇跡的に撮影時間になると雨は止み、木々はしっとりと濡れ、荘厳な雰囲気を醸し出していました。砂利道であった足元はひじょうに悪く、ピカピカに光っていた稲盛さんの靴は泥だらけになりましたが、嫌な顔一つせず、撮影に応じてくださいました。

この写真の番傘は、雨が降るという天気予報のもと、西郷南洲に関する記事のイメージとして用意をしていたものでしたが、正直なところ、小道具を準備しての撮影を怒られるのではないかと思っていました。しかし、「よっしゃ、よっしゃ」と快く傘を持って立ってくださり、われわれの心配は無用のものに終わりました。

それまで稲盛さんというと、「大経営者」「厳しさと激しさを携えた方」というイメージがあり、気難しさも予想していましたが、実際にお会いすると、とても人のよい、そしてサービス精神旺盛で茶目っ気も持ち合わせたチャーミングな方だという印象を持ちました。

撮影をさせていただいたとき、私は必死でした。良いアングルを探しているうちに雨でグチャグチャになった砂利道を匍匐(ほふく)前進し、なりふり構わずカメラを構えている姿を見て稲盛さんが、「あいつはプロやな」と言われていたと、後になって伝え聞きました。
こんな独立したての一介のカメラマンでも、ひたすら懸命に何かをしている姿は必ず誰かが見ていてくれる、そう思えた貴重な撮影の機会に恵まれたと思っています。

カメラマンとして、撮影中に「これは良い! いただき写真だ!!」とシャッターを押せることは、一年に一度あるかないか程度です。しかし、この時この瞬間は、まぎれもなく「このカットいただき!!」と思えるその時であったことを、いまも鮮明に覚えています。思えばこの撮影をさせていただいたことが、今なお私が写真道を突き進む上での、大きな礎となっています。

有限会社LiVE ONE
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