Facebookアーカイブ

ソーラーエネルギー事業と稲盛

210920

1999年9月21日、北海道札幌市で開催された第11回太陽光発電国際会議(PVSEC)において、稲盛に「PVSEC SPECIAL AWARD」が贈られました。
同賞は、太陽光発電に関する科学技術、産業技術の進展および導入政策の推進等に多大な貢献をした功労者に贈られるもので、稲盛が先駆的に太陽電池の開発に取り組んできたことや、太陽光発電懇話会(現社団法人太陽光発電協議会)を設立して太陽光発電に関する利用技術の確立、普及促進、産業の発展に中心的役割を果たしてきたことが評価されたものでした。
その受賞は、日本国内のみならず世界的にも太陽光発電事業をけん引してきた稲盛に、まさにふさわしいものでした。

ソーラーエネルギー事業は、化石燃料資源の枯渇による人類生存の危機を防ぎ、「環境に負荷のない太陽エネルギーの利用を通じて人類の存続と人々の幸福に貢献する」との大義を貫いてきた誇りある事業です。
稲盛がこの太陽光発電の研究開発を始めたのは1973年のオイルショック直後でした。当時、世界中で、石油に代わる代替エネルギーが必要であるとの声がうねりのように広がって、多くの企業がソーラーエネルギー事業に参入しました。

しかし、一時期高騰した原油価格も需給緩和により短期間で下がり、安値安定が続くことになったことから、1980年代に入っても市場は育たず、参入したベンチャー企業は次々倒産や撤退していき、大手メーカーでさえ事業を縮小させ、研究開発のみに注力するようになりました。各国政府の研究開発予算も縮小し、小さくなった市場も消え入る寸前となり、"冬の時代"ともいうべき最も困難な時代が続くこととなりました。

そのように他社が事業から撤退していく中でも稲盛は、社内を励ましてソーラーエネルギー事業を継続し、太陽光発電の普及促進に努めました。事業開始以来四半世紀近く採算が取れない状態が続きましたが、稲盛の事業継続への意志はいささかも揺らぐことはありませんでした。それは偏(ひとえ)に、太陽エネルギーなどの再生エネルギーにシフトしていかなければ人類の永続的繁栄はあり得ないという確信、使命感によるものでした。
ソーラーエネルギー事業は、「事業には大義がなければならない」という稲盛の経営哲学がまさに現れた、かけがえのない重要な事業の一つです。