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稲盛和夫、かく語りき

211011

『稲盛和夫、かく語りき』(日経BP)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

<稲盛の言葉>
――技術開発は素人でなければできないとか、ニーズのあるものは必ず作れるとか言われているそうですが...。

稲盛 素人でなければできないと言っていますのは、もちろん全くの素人ではどうにもなりませんから、基礎的なことは知っていなければいけません。ただ中途半端に分かってき始めますと、いろんなことを考えているうちに、ネガティブなことがいっぱい出てくるわけです。やりたいと思っても、やれるわけがないと思うわけです。
しかし、私はそうはなりません。純粋に深く願望するわけです。そうすると、それが潜在意識にまでなって、それ以後私の行動も思考もすべてそれによって動くようになるんです。ところが脳細胞のところだけで、論理的に考えて、ああしたい、こうしたい、できるだろうかというだけでは、これはできないと思います。
そういう意味では、専門家でない素人の方が、純粋に願望を持ちうるという気がするんです。だから、素人でなければできないと言うんです。純粋に深く願望を持ち、行動も思考もそれによって律せられれば、開発できないものはないと思っています。

社内で技術開発をする場合にはこういうふうにしているんです。例えば、エメラルドをやろうというときには、いつまでにやるぞと決めた未来の一点に向かって自己の開発能力が進行形で高まっていくとして捉えるわけです。私は、「自己の開発能力を未来における進行形で捉える」と言っているんですが、そういう思考ができないと、現在持っている技術力と頭脳だけで、こうやったらできない、それは無理ですよということになります。そうではなくて、今は不可能だと思われるが、あと2年なら2年の間に、どういうことをやったら可能になるかというふうに社員にも考えさせています。

もちろん、できない場合もありますが、とにかく、うちでは、現在の技術で現在のテーマを批判することは許しません。その時点までに開発能力がどのくらい向上するかを予測、予見することが開発の第一歩だと見ています。(P18-20に掲載、初出は『日経ビジネス』1975年12月8日号)

写真: 1975年 再結晶宝石のエメラルドを完成させ、オープンした直営店舗