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稲盛和夫研究』創刊第1号の論文紹介④「社内報に見る稲盛経営哲学」
紀要『稲盛和夫研究』創刊第1号から論文・研究ノートの内容についてシリーズでご紹介します。
第4回は、稲盛和夫研究会の経営哲学研究分科会に所属する北居明教授(甲南大学経営学部)の研究ノート「社内報に見る稲盛経営哲学―『敬天愛人』の内容分析を通じて―」です。
本論文は2021年8月26日に開催された第1回稲盛和夫研究会シンポジウム「稲盛和夫研究にいかに取り組むか」での研究報告をベースに執筆された論考です。北居教授はこの中で、1966年5月から1985年11月までの社内報『敬天愛人』掲載の稲盛社長巻頭言を分析し、次のように総括しています。
「本稿では、『社内報敬天愛人 巻頭言集(上巻)』における稲盛氏の発言をもとに、稲盛氏が重視し、部下に伝え残そうとした考え方を分析することで、どのような組織文化を京セラに醸成しようとしたのかを見ようとした。その結果、1973年度以降稲盛氏の発言はそれ以前に比べると格段に増えており、内外の情勢変化に対して、従業員に多くのメッセージを伝えようとする姿勢を見て取ることができた。
発言の内容は、やはり企業経営に関する言葉が多いが、その中で目立つのは『心』という言葉の多さ(第24位、226回)である。青山が『心の経営』と名付け、稲盛氏自身も『心をベースとした経営』と呼んだ京セラの価値観は、社内報にも反映されていたと考えられる。稲盛氏は、社内に対し経営方針や外部環境について述べるだけでなく、『心』の重要性も一貫して訴えていたことが理解できた。
また、発言の内容は年度ごとに異なり、特に70年代と81年以降では相対的な言及頻度に変化が見られた。70年代は企業内部の課題や方針、目標に関する言及が比較的多かったが、81年以降は人の内面に関する言及が増えていった。(中略)『心』は、人々の信頼関係のもととなる善意や誠実さに加えて、意思決定の基準、願望を現実化する原動力としての意味も表すようになっていった。(中略)これは稲盛氏が述べてきたことを『心』を中心に整理していったプロセスではないかと思われる。その意味では、稲盛氏のメッセージは『上巻』を通じて言葉は違えども一貫しており、驚かされる」(『稲盛和夫研究』第1号、106-107頁)
発売:京都大学学術出版会(冊子版については、以下のサイトから購入可能です)
ISBN 978-4-8140-0417-1 / PRINT ISSN 2436-827X / ONLINE ISSN 2436-8261
※今回取り上げた論文の電子ジャーナル版については、J-STAGEにて閲覧可能です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/inamori/1/1/1_93/_article/-char/ja