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寄稿紹介③ 「LSI用セラミック多層パッケージの開発」
京セラが大きく飛躍する契機となった「大規模集積回路用セラミック多層パッケージの開発」により、生産分野では最も権威がある賞の一つといわれる大河内記念生産特賞を受賞(1972年3月15日)した直後、稲盛は窯業協会(現日本セラミックス協会)の協会誌『セラミックス』(1972年6月号)に「LSIセラミック多層パッケージの開発」と題する論文を寄稿しています。
この中で稲盛は、IC(集積回路)またはLSI(大規模集積回路)を封入し、外部環境から保護するとともに、外部の回路に接続させる役割を担うパッケージは、材質的に(1)プラスチック封入型(2)金属管封入型(3)セラミック-ガラス封止型(4)セラミック多層型に分類できるが、「保護作用についての信頼度」「外部回路に至るリード数」「半導体素子の実装密度」において、京セラが独自に開発したセラミック多層型が最も優れていると述べています。
IC開発初期に用いられたパッケージは、ガラスと金属、またはガラスとセラミックスとの接着によって構成されていたため、材料間の熱膨張係数の違いによる様々な不具合が生じていました。これに対して、セラミック多層パッケージは「ceramic monolithic(セラミック一体構造)」パッケージなる構想のもとに、セラミックス(アルミナ)という化学的、熱的に安定した材料の中にICを完全に封じ込めようとする意図から開発されたものであり、その信頼性の高さが集積回路の大規模化を促進したと説いています。
続けて稲盛は、セラミック多層パッケージの製造技術の概略を説明するとともに、最後にその将来の展望について、次のように述べて本論文を結んでいます。
「セミラック多層パッケージは、情報産業の寵児であるLSIに、さらに無限の可能性を与えるものということができる。しかもこれは近い将来情報産業全体に絶大な影響を与えることが予想されるのである」
写真
1枚目:『セラミックス』(1972年6月号)表紙
2枚目:セラミック多層パッケージ開発の端緒となったハイデンシティパッケージ(HDP)
3枚目:第18回大河内記念生産特賞受賞(1972年3月15日)