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寄稿⑤ 「経済天気図」(京都新聞)

230227

前年に月商10億円を達成し、新年の経営方針発表会で東証・大証の一部昇格を目指すことを京セラ従業員と誓った1973年(昭和48年)、稲盛は京都新聞の求めに応じて、同紙経済面のコラム「経済天気図」に6回にわたって寄稿しました(執筆者名は「敬天」)。

稲盛が執筆した年初においては、景気はなお好況が続いていたものの、時あたかも世界的なインフレが各国政府および企業を悩ませていました。そのような中で、一企業の枠を超えて、社会問題を捉え、次のようなテーマで提言を行っています。

第1回「好況でも楽観できぬ」 (1973年1月11日)
第2回「インフレ対策を最優先」 (1973年1月25日)
第3回「輸入の完全自由化を」 (1973年2月 8日)
第4回「物価上昇見直す春闘を」 (1973年2月22日)
第5回「福祉国家と人間性阻害」 (1973年3月 8日)
第6回「許せぬ不当な輸入品価格」(1973年3月23日)

特に第3回「輸入の完全自由化を」では、当時、物価上昇の原因の一つとなっていた輸入制限の撤廃について触れ、次のように説いています。
「何かよいことをなさんとすれば、必ず犠牲を伴うのは当然であり、国民としてもある程度の犠牲を払わなくてはなるまい。従って、政府は、自由主義経済における世界貿易の正義を貫くという点において、と同時に国民生活を破壊に導くインフレ防止という点においても、当面の円問題に対し、輸入に関する完全自由化を断行し、欧米諸国に向かって筋を通した態度を示すべきである。業界としても、これに要する負担は当然の負担とし、協力を惜しまないような、世界的国家的広い視野に立った判断が肝要な時である」

こうした時事の問題に対して、義憤に駆られたような思いを綴った連載に先立ち、稲盛は次のような草稿メモを残しています。
「社会資本ノ充実ト正当ナ企業活動ニヨツテ利潤ヲ得ルコト」
「企業人ハ姿勢ヲ正セ」
「企業ノ存続ガ資本主義ヲ根本カラササエテイル」
「今コソ精神ノ復興ヲ」
「不平ヤ批評デハ改善ハ出来ナイ」

京セラという企業のみならず、世のため人のためになすべきことは何なのか
――そのことを自らに問うた軌跡をこの連載に読み取ることができます。

写真:1973年当時の稲盛