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経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ

『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(PHP研究所)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。
京セラの経営管理の根幹をなすのが、「アメーバ経営」と呼ばれる経営管理システムです。私がこのアメーバ経営を構築した目的の一つに、「経営者意識を持つ人材の育成」があります。
創業当時、私は開発、製造、営業、管理などすべての部門を直接見ていました。製造現場に問題があれば、すぐに走っていかなければならないし、注文を取るために客先まわりもしなければなりません。また、お客様からのクレームにも先頭に立って対応しなければなりませんでした。つまり、同時に一人何役もこなさなければならないほど、多忙を極めていたのです。
私は、できることなら自分の分身をつくり、「おまえは営業に走れ」とか「製造で問題が起きているから、おまえはすぐにそこに行け」と命令できれば、どれほど助かるだろうかと思いました。あたかも孫悟空のように自分の毛を抜き、ひと吹きすれば分身が何人もつくれるようになればいいのにと、真剣に思ったぐらいです。
しかし、そうもいかず、私はトップとして会社全体を一人で見ていたのですが、会社が急速に成長していくなかで、とうとうそれが不可能なことだと分かりました。それならば自分と同じように経営に責任を負い、経営者としての自覚を持った人を育てたいと思ったのです。つまり、「経営者としての責任感を持った共同経営者」を一人でも多くほしかったのです。
どんな会社でも経営者は孤独なものです。トップとして自分一人で最終的な決断をしなければならないだけに、常に心細さがつきまといます。私の場合、それまでに会社を経営した経験もなければ、経営に関する知識もなかったわけですから、なおさら自分と苦楽を共にし、一緒に経営の責任を感じてくれる、いわゆる仲間としての共同経営者を心の底から欲していたのです。(P162-163に掲載、出典は2000年8月26日 「盛和塾」第8回全国大会)