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シリーズ「稲盛和夫の著書」 第6回『稲盛和夫経営講演選集(全6巻)』

230306

稲盛和夫が世に問うた書籍のなかで、質量ともに最も重厚なものが、この書籍です。
1970年代から2010年代までに稲盛が行った、約800にも及ぶ膨大な講演録から選び出した、珠玉の講演約55編を全6巻に編纂しています。

編集にあたり選抜した稲盛の講演を年代順に並べたところ、図らずしも、第1巻「技術開発」、第2巻「経営哲学」、第3巻「企業成長」、第4巻「経営手法」、第5巻「リーダーシップ」、第6巻「経営の要諦」というテーマ別の構成となり、全編で稲盛の経営思想を俯瞰することが可能となっています。

巻頭に掲載されている講演が実施された70年代といえば、京セラが未だ中堅企業の頃、稲盛自身もまだ40歳代、一般はおろか経済界でもほとんど知られていません。しかし、この講演選集をひもとき驚くのは、その頃に稲盛が話したことが、晩年とほとんど変わりないことです。これは、稲盛の先見性を申し上げているのではなく、変わることのない稲盛の信念と実践を、ぜひご理解いただきたいのです。

70年代以降、京セラは急成長を遂げ大企業の仲間入りを果たし、同時に稲盛自身も第二電電創業や日本航空再生を経て、押しも押されもせぬ経営者となっていきます。しかし、功成り名を遂げた後も、若い頃に唱えた生き方、考え方、そして行動を、謙虚にして驕らず続けていったことにこそ、稲盛の真価があるのだと思います。

この講演選集の制作途上、収録するすべての講演を稲盛の前で読み上げ、確認する機会がありました。そのとき、数十年前の自らの講演記録に耳を傾ける稲盛がいたく感心し、「いいこと言っとるわ。ほんまにわしが言ったのか」とつぶやいたことも三度四度。老境に達した稲盛自身が感心するほどの確固とした考え方を、若き稲盛が説き、生涯貫いてきたのです。

もちろん、若いときから進歩していないということではありません。根本原理は一貫して変わらないものの、長年にわたる経営体験を経て、その経営思想はより精緻に、より骨太に、より実践的になっていきます。その辺りの経営者稲盛和夫の「進化」をも読み取ることができるのも、この講演選集の魅力です。

稲盛の講演を聞くことができない現在、稲盛の「言霊(ことだま)」をあふれんばかりに詰め込んだ、稲盛著作の最高峰に挑戦してみてはいかがでしょうか。