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稲盛ゆかりの地を巡る-「鹿児島大学 郡元キャンパス」

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稲盛ゆかりの地を巡る。前回に続き稲盛の母校鹿児島大学の紹介です。

同大学の工学部・医学部は、稲盛が卒業した年、1955年7月に鹿児島県立大学から国立鹿児島大学に移管され、現在の郡元キャンパスへの移転が完了したのは、1959年でした。後に京セラ株式会社を成長発展させ、経営者として大成した稲盛でしたが、母校である鹿児島大学には、受けた恩義に報いるべく奨学制度や寄附講座の創設、学舎の建設などを通じて後輩たちへの支援を生涯にわたって行ってきました。そんな稲盛の寄付に対する思いは自著で次のように述べられています。

「郷里鹿児島では、91年に卒業した鹿児島大学工学部同窓会から記念会館建設の要請がきた。工学部創立50周年を迎えるので、卒業生である私に寄贈して欲しいというのだ。当初、一人では負担が大きすぎるので断ろうかと思った。だが、相談した両親や家族が、「お世話になった大学だから」と強く勧めたので、引き受けることにした。
ちょうどその頃、建築家の安藤忠雄さんと知り合う機会があり、設計をお願いした。建物の中に卵が入っているようなユニークなデザインを安藤さんが考案し、94年に記念会館が誕生した。「創造の生命が宿る小宇宙をイメージした。ここから世界へ若者が飛び立って欲しい」。安藤さんと私のこのメッセージを後輩たちに素直に受け止めてもらえればうれしい。会館建設を喜んでくれた母キミと父畩市の名を取って「キミ&ケサ メモリアルホール」と呼ばれている。

99年には、鹿児島大学工学部に基金を提供し、「京セラ経営学講座」を開設した。これは起業家の育成を目的に、京セラの経営哲学や経営管理手法を教える講座だ。鹿児島大学からの依頼に対し、企業が学問の世界、教育の場において支援することは、企業の重要な社会貢献の一つであると考え、基金を拠出することにした。日本中に経営学講座がたくさんある中で、キラリと光る、特色のある講座となれば、母校への恩返しにもなると思っている。私自身も時々教鞭をとり、経営哲学や経営の要諦などを学生に講義している。この講座から、優れた経営哲学を持った起業家が輩出し、すばらしい事業が展開され、地域経済の活性化に大きく貢献することを期待している。

企業経営には、利益を追求するにあたって、人間として守るべき道がある。企業である限り、利益は必要だが、人を騙したり、おとしめたりする不正な方法では、企業が長年にわたって繁栄することはできない。住友家の家訓に、「君子、財を愛す。これを取るに道あり」という言葉があるそうだが、私は企業がとるべき公明正大な態度を、「利を求むるに道あり」と称している。また同様に、利益を使う場合にも、私利私欲のためでなく、世のため人のためにお金を使う、人間としての正しい道が存在する。すなわち、「利を散ずるに道あり」である。

事業家は、得た利益のなかから、税金を支払い、社会のために貢献している。さらに、残った利益の一部を社会に還元することは立派な行為だと思う。企業が純粋な気持ちから、自らのレベルに合わせて、意義のある貢献を行えば、社会全体がもっと潤いのある、豊かなものになると信じている」
『ガキの自叙伝』日本経済新聞出版社 より

現在、郡元キャンパスには稲盛の名が付けられた3つの施設があります。大ホール・会議室を備えた稲盛会館。人間力の総合的育成のための倫理や哲学に関する研究・交流のための施設 稲盛アカデミー棟。一般利用可能なフードコートやレストランを備え、稲盛哲学や京都賞に関する展示を見学できる稲盛記念館。稲盛の母校への感謝が込められたこれらの施設は学生や教職員はもちろん、学外の利用者も盛んに活用しているそうです。鹿児島大学にお越しの際には、ぜひ訪れてみてください。

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1枚目:鹿児島大学の寄付講座「京セラ経営学講座」贈呈式にて(1999年)
2枚目:稲盛会館 外観(「キミ&ケサ メモリアルホール」は会館内大ホールの名称)
3枚目:鹿児島大学稲盛アカデミー発行のガイドマップを稲盛ライブラリーで編集

【鹿児島大学 郡元キャンパス】
〒890-8580 鹿児島市郡元1丁目21番24号
キャンパス内では稲盛の寄付で建設された3施設を訪れることができます。
・稲盛会館 https://www.eng.kagoshima-u.ac.jp/inamori/
・稲盛アカデミー https://www.inamori.kagoshima-u.ac.jp/
・稲盛記念館  https://www.kagoshima-u.ac.jp/education/kinenkan.html