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寄稿⑨ 「随筆・わが経営を語る」(『QUALITY MANAGEMENT』創刊号、1981年7月発行)
オイルショックによる低成長経済から脱し、本格的な安定成長期に入った1980年代初頭、省エネルギー化、インフレの定着化、保護貿易主義の台頭、発展途上国の急成長等、先進諸国を取り巻く環境変化にどのように対応すべきかが大きな課題となっていました。
こうした経営の「量よりも質」が問われる時代において、組織の活性化が個人の活性化に結びつくマネジメントの確立を目指して創刊された会員向け雑誌『QUALITY MANAGEMENT』(非売品)の巻頭に、稲盛は「随筆・わが経営を語る」と題するエッセイを寄稿しました。その中で、稲盛は京セラ創業以来の21年間の経営を振り返り、時代が変わっても揺るがない経営の本質について、次のように語っています。
「企業経営は、ただ常識でこうだ、世間の慣例ではこうだといった安易なものではないはずです。また、全く新しい事柄に遭遇した場合、過去の例によるだけで解決することは困難でしょう。物事の本質をみきわめる考え方によってこそ、新しい局面に遭遇するたびにうろたえたり、とまどうこともなく、未知の世界に飛び込んでも的確な決定が可能であり、さらに新しい分野を切り拓き発展させることができる大きな要因が含まれていると考えます。この21年間、会社が大きくなるにつれて、さまざまな事柄が起こってきました。
また、社会の環境もめまぐるしく変動し、いまもなお変化し続けております。社会が高度になり、複雑になればなるほど、起こってくる現象も複雑な形であらわれます。この現象面にのみ目をうばわれた場合、物事の本質を全く見失ってしまうでしょう。やはり経営は単に現象面からだけで判断するものではなく、現象の中にある本質的なものを感じとり、見きわめることが大切なことだと思います」
