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『経営――稲盛和夫、原点を語る』①

20240415

『経営――稲盛和夫、原点を語る』(ダイヤモンド社)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

......経営の「け」の字も知らない私は、「経営をしていく上で何をベースにすれば良いのか」ということを考えました。そして、私には経営の経験がなかったものですから、子供の頃から両親に教わった、また、小学校・中学校・高校と過ごす間に先生方から教わった、「人間とはどのようにあるべきか」ということに思い至りました。悪さをして両親や先生に叱られたときに教わった、非常にベーシックで、人間として最低限もっていなければならない「人間として生きるべき道」というようなものしか、私にはなかったのです。

それ以来、今日まで経営を行う中で、私は経営の基本をそこに置いてきました。緊急の判断を行う場合でも、技術的な判断を行う場合でも、組織上の判断を行う場合でも、そのベースは「人間とはどのようにあるべきか」ということ、ただ一点です。それは正しいことを正しく貫いていくことであるとも信じています。(中略)

経済という現象面では、表面上、いろいろな形でいろいろなことが変わっていくでしょう。しかし、経営そのものはそのような変化に付和雷同するべきではないと思っています。方法論だけで経営を行う、つまり経営学で教えられることだけをもって、「経営というのはこのようなものだ」と思い、経営の方法や術策だけを経営だととらえている方は、周囲が変化するとそれに流されます。しかし、経営者はいかなる変化があろうとも、根本にまで掘り下げた経営哲学をもち、経営というものをそう簡単に変えてはならないと思うのです。(『経営――稲盛和夫、原点を語る』「私の企業家精神」熊本日日新聞情報文化懇話会講演、1976122日、p.9-13