Facebookアーカイブ

稲盛と喫茶店

20240411

毎年413日は「喫茶店の日」といわれています。1888年(明治21年)の413日、東京上野に日本初の喫茶店「可否茶館(かひいさかん)」が開店したことに由来するのだそうです。今でこそ全国津々浦々にある喫茶店も、この一店から始まったことがわかります。

そこで、今日のテーマは「稲盛と喫茶店」。稲盛はかつて、部下に対して事業拡大の戦略をわかりやすく説明するため、自らを喫茶店のマスターに例え、次のように話したことがありました。

「私ならこうします。自分でブレンドして、コーヒーを手挽きで売ってみる。当面は数人のスタッフを雇っていく。自分もマスターとして、蝶ネクタイをしてお店に立つ。割と売れて、お客様がおいしいと言うので、勧誘して回ってみる。すると、『おれは昔、苦いコーヒーを飲んで腹を下したことがあるのだ』と言う人がいたりする。

(中略)そういう人には、『いや、うちのコーヒーは違います。昔の日本のコーヒーは苦かったですが、うちのは少しマイルドでひじょうにいい味です』と言って、無料で飲ませてみて、いろいろと手を打つ。それでまた売れて、相当いけそうだと思えるようになる。

そうすると、私はお店をスタッフに任せて、『このコーヒーは自分で飲んでみてもおいしいし、嫌いだと言った人まで最近は飲み出した。これならいけるぞ。お店をもっと拡大するには、新しい店舗をここに並べてフランチャイズ経営をしよう。店長になる人は、相当経営力のある人でないといけない。自分はコーヒー豆を選別して買ってきて、機械でコーヒー豆を挽いて、缶入りコーヒーをつくって、自動販売機を駅という駅に並べよう。1日に5万本売れれば、これだけの売上が立つ。そのためには、まずお金がいる。自動販売機メーカーと契約もしなければならないし、工場もつくらなければならない』というように、戦略をどんどん組んでいきます」(機関誌[盛和塾] 131号 巻頭講話「経営者意識を持つ」より)

経営者としての稲盛は、常々理念の大切さを説いていましたが、同時に企業を永続的に発展させるためには、現状に満足することなく、次から次へと新しい事業を展開するための戦略を組むことも求められると強調しています。高邁な理念を説く人格と、事業戦略を組んでいく才覚を兼ね備えることが、経営者には不可欠なのです。