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『経営――稲盛和夫、原点を語る』②

20240507

『経営――稲盛和夫、原点を語る』(ダイヤモンド社)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

私は時々、「どのような事業をすればいいかわかりません。何かいいアイデアはありませんか」というような相談を受けるのですが、世の中には、事業を起こせるだけのアイデアは、いくらでもあると思っています。そのアイデアを形にできるかどうかは、「その人が自分の人生や事業に対して、どれほどの夢を描ける人であるのか」ということにかかっていると思います。

私どもは電子工業用の新しい部品をつくっていますが、もとになったのは焼き物の技術です。大学で化学を専攻した者の中では、焼き物を扱う会社は、一番成績の悪い人間が行くところであり、焼き物の世界は魅力もなければ発展性もない世界だと言われていました。 

しかしその世界の中で、私は自分で描いた夢を追求していきました。

(中略)先般の不景気で、私どもの会社も仕事量が半減しました。従業員も非常に心配をしていましたが、私は社員に向かって、「好不況の波は必ずある。今はうちも非常に苦しい状況だが、私は決して他の会社のように人員整理するつもりはない。仕事が午前中やるだけしかない日が続くが、かえっていいではないか。今こそ、われわれの夢を育てよう。われわれにはいろいろな可能性があるのだから、社員のみんなも一緒に考えてほしい。この不景気の中でも、われわれに起こるのは決して悪いことばかりではない。われわれには、すばらしい夢やロマンがある。希望に燃えながら、一つひとつ実現していこう」と訴えたのです。

どんな仕事でも、決して傍から見るほど楽ではありえません。その中で、社員に夢とロマンを与えられる経営者でなければならないと思います。

(『経営――稲盛和夫、原点を語る』「私の企業家精神」熊本日日新聞情報文化懇話会講演、1976122日、p.26-27