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『経営――稲盛和夫、原点を語る』⑧

241105

『経営――稲盛和夫、原点を語る』(ダイヤモンド社)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

現在の企業では、そのリーダーである経営者の選任にあたって、「徳」つまり「人格」はあまり顧みられず、その能力や功績だけをもってCEOなどの幹部が任命されています。さらには先に述べたように、高額の報酬がインセンティブとして与えられています。つまり、「人格者」よりも、功績に直結する「才覚」の持ち主のほうが、リーダーにふさわしいと、ビジネス界では考えられているのです。

しかし本来、多くの人々を率いるリーダーとは、報酬のためではなく、集団のためという使命感をもって、自己犠牲を払うことも厭わない高潔な「人格」をもっていなければならないはずです。事業が成功し、地位と名声、財産をかちえたとしても、それが集団にとって善きことかどうかをよく考え、自分の欲望を抑制できるような強い「克己心」や、その成果を社会に還元することに心からの喜びを覚える「利他の心」を備えた、すばらしい「人格者」でなければならないのです。

(『経営――稲盛和夫、原点を語る』「企業倫理とリーダーシップ」ケース・ウエスタン・リザーブ大学講演、20021018日、p.401