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『稲盛和夫の実学』文庫新装版⑪

『稲盛和夫の実学』文庫新装版(日経BP)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。
企業というものはつきつめて考えれば人間の集団でしかない。それをたんなる烏合の衆ではなくひとつの生命体としてまとまったものにするには、その集団のリーダー、つまり経営者が社員から信頼され尊敬されていなければならない。そうでなければ経営者が指し示す目標をどんな困難があろうと達成しようという社員がいるはずはないからである。このようにすべての社員から尊敬され「この人のためなら」と心から思われるような経営者となるためには、自らの人格を高める努力を続けていかなくてはならない。
また、そこまで人間ができていなくても、一緒に仕事をしていく社員に、経営者としての誠意は理解してもらわなければならない。そのためには、経営者自身が会社や社員のために誰にも負けない努力を重ねていくことがもっとも大切になる。
京セラ急成長の要因は、高度な技術力とアメーバ経営や会計学などの緻密な経営管理システムであると言われることがある。しかし、技術力にしても経営管理システムにしても、このような人の心をベースにした経営風土があって初めて機能するということを銘記する必要がある。どんなに素晴らしい技術を開発しても、どんなに合理的な経営管理システムを駆使したとしても、会社や社員に魂を吹き込むのは、やはり経営者でなければならない。(中略)
良い採算制度があるから採算が上がるのではなく、現場の人たちが採算を上げようと思うから上がるのである。そのためには経営者自身が、必要なエネルギーを現場の人たちに直接注ぐことが大切となる。私はそれを「魂を注入する」と呼んでいる。
そうして初めて、社員も心からやる気になってくれる。私は「なぜ京セラはそんなに利益が出るんですか」と訊かれたときに、「ウチの社員がよく頑張ってくれているからです」という言葉が、心から何のためらいもなく出る。経営者が魂を注入しなければ、どんなにすぐれた経営管理システムがあっても、社員を動かし、会社を向上させていくことはできない。
(『稲盛和夫の実学』文庫新装版、p.137-139)