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稲盛和夫の対談②「心の持つエネルギーを生かそう」(『宝石』1984年5月号)

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1984年、稲盛は世界的数学者・広中平祐氏と対談を行いました。二人の出会いは1980年。京都の経済人、学者、研究者が集い文化や学問の振興を目指す「京都会議」が縁となり、その後も交流を重ねていきました。

当時の京セラは、創業から25年を経て中堅企業へと着実に成長を遂げ、対談前年にはヤシカの合併を実現しています。そうした経験を振り返りながら、稲盛は「経営における心のあり方」について語り、広中氏とともに人の心が持つ大きなエネルギーについて議論を深めました。

広中 
稲盛さんの「ヤシカが経営的に困ってたから助けたんだ」という表現。これ聞いてると企業経営者の言葉には不似合いな気がするんです。アメリカなんかでは、業績のいい会社を乗っ取って自社のプラスにするという話はよくあるんだけど、成長発展を至上の目標とするはずの経営者が困ってる会社を助けたんでは大損する、とはお考えにならないのですか。

稲盛 
経営者としてはまあ失格でしょうね。しかし、私の価値観なり、判断の基準は、儲かるか儲からんかじゃなく、頼みにきた社長がどういう人間性を持ってるか、なんです。その人が真面目ないい人だったんで、お引き受けしたんです。(中略)

今度の場合は、訥々(とつとつ)とした社長の話しぶりを見て、なんといい人だろうと思って、こんな心のきれいな人が苦しんでるなら助けたい、と思ったんです。私は利害は二番目で、いい人と交わりたい、という気持ちがいちばん強いんです。短い人生のなかで最も楽しいことは自分の心の波長と合う人と出会うことだと思っていますから。

合併の際には会社の利益だけではなく、助けを求めた相手がどのような人間性を持つ人物なのかを基準に判断する。一見、経営者らしくない考え方に映るかもしれません。しかし、この揺るぎない価値観が、京セラの成長を支えた稲盛の経営哲学だったのです。

経営者と数学者。一見すると異なる世界で活躍した二人ですが、その根底には「本質を見極める力」や「考え方の重要性」という共通の信念があったのではないでしょうか。

★二人の交流については以前ご紹介していますので、詳しくはリンク先をご覧ください。

https://www.kyocera.co.jp/inamori/library/facebook-archive/2022/20220721.html

写真:1983年 ヤシカ合併時の稲盛