コラム:医療DX推進体制整備加算とは?

医療DX推進体制整備加算の概要や算定要件、施設基準についてわかりやすく解説

医療DX推進体制整備加算とは?
算定要件・施設基準と届出方法を解説

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2024年度の診療報酬改定において、医療DX推進体制整備加算が新設されました。加算に関する情報を調べてみたものの、内容が複雑で難しく感じた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、医療DX推進体制整備加算の概要や算定要件、施設基準について、2024年7月に発表された加算の見直しに関する内容を含めてわかりやすく解説します。

届出方法や保険医療機関内での掲示例もご紹介しますので、医療DX推進体制整備加算の概要をつかむ際の参考になさってください。

医療DX推進体制整備加算とは

医療DX推進体制整備加算とは「デジタル技術によって医療の質を高める体制」を評価するもので、2024年度の診療報酬改定において新設されました。

医療DX推進体制整備加算を算定するためには、保険医療機関において、マイナ保険証の利用促進や、電子カルテ・電子処方箋の活用などの取り組みを行う必要があります。

基準を満たした上で届け出ると、2024年6月より以下の点数を加算して診療報酬を算出できます。

【医療DX推進体制整備加算の点数】(2024年6月~9月)

種別 点数 注意点
医科 8点 初診時に1回
歯科 6点 初診時に1回
調剤 4点 患者1人につき1回/月

2024年10月からは、以下のように3段階の評価区分が設けられ、マイナ保険証の利用率等を加味して加算点数が変動します。

評価区分
(マイナ保険証の
利用実績)
加算1
(十分な利用実績)
加算2
(中程度の利用実績)
加算3
(低い利用実績)
医科 11点 10点 8点
歯科 9点 8点 6点
調剤 7点 6点 4点

加算1と加算2を算定するためには、「マイナポータルの医療情報を踏まえて患者からの相談に応じている」という条件を満たす必要もあります。

加算の各段階で求められるマイナ保険証の利用率(案)は以下のとおりです。

適用時期 2024年10月~ 2025年1月~
加算1 15% 30%
加算2 10% 20%
加算3 5% 10%

2024年8月時点では、マイナ保険証の利用率を考慮せずとも加算の届け出が可能です。しかし、2024年10月からはマイナ保険証の利用率に応じて算定できる点数が異なるのでご注意ください。

新設の背景

令和6年度診療報酬改定における医療DXに係る全体像
出典:令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】|厚生労働省保険局医療課

医療DX推進体制整備加算が新設された背景のひとつには、厚生労働省が取り組む「医療DX」が挙げられます。

医療DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用によって医療の質や効率を向上させることです。

各保険医療機関が医療DXを段階的に進め、オンライン資格確認(マイナ保険証の確認)や電子カルテ・電子処方箋の活用といった施策に適応できるよう、医療DX推進体制整備加算が新設されました。

2023年4月からはオンライン資格確認の導入が原則義務化され、2025年4月からは、電子カルテ情報共有サービスの開始が予定されています。

将来的には各種システムを連携し、医療に関する情報を共通のプラットフォームに集めることで、カルテや処方箋などの診療情報を共有・活用できるようにすることが狙いです。

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医療DX推進体制整備加算の算定要件

医療DX推進体制整備加算を算定するには、のちほど紹介する「施設基準」を満たした上で届け出る必要があります。

【医療DX推進体制整備加算(医科)の算定要件】

医療DX推進に係る体制として別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して初診を行った場合は、医療DX推進体制整備加算として、月1回に限り8点を所定点数に加算する。

引用:令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】|厚生労働省保険局医療課

加算点数については、2024年10月より新しく3段階の評価区分が設けられ、マイナ保険証の利用率等に応じて変動します。

診療費請求書兼領収書

医療DX推進体制整備加算の施設基準

医療DX推進体制整備加算を算定するためには、以下の施設基準を満たす必要があります。

【2024年6月~9月】

番号 施設基準の要約 注意点・ポイント
1 オンライン請求を実施している -
2 オンライン資格確認を行う体制が整っている -
3 医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制が整っている -
4 電子処方箋を発行する体制が整っている
  • 経過措置あり
  • 未導入の場合は記載しない
5 電子処方箋を未導入の場合は導入時期を記載する
  • 4で記載しなかった場合に記載する
  • 未定の場合は空欄でもよい
6 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制が整っている
  • 経過措置あり
7 マイナ保険証の利用実績が一定以上ある
  • 経過措置あり
8 マイナ保険証の利用率を記載する
  • 経過措置あり
9 保険医療機関の見やすい場所に、医療DX推進体制や取り組みについて掲示している -
10 医療DX推進体制や取り組みについて、ウェブサイトへ掲載している
  • 経過措置あり
  • ホームページを所有していない場合は掲載しなくてよい

参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局および様式1の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省をもとに作成

2024年10月からは「マイナ保険証の利用に関する十分な実績があること」や、「マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に関する相談に対応すること」などの施設基準が新たに加わります。

表内の「経過措置」の詳細については、後述する「医療DX推進体制整備加算の経過措置」をご覧ください。

上記の施設基準と注意点は要約したものであるため、届出の際は「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」で詳細をご確認ください。

歯科の場合

歯科の医療DX推進体制整備加算の施設基準は「3」が医科と異なりますが、内容に変わりはなく、届出添付書類の様式も同一です。

【2024年6月~9月】

番号 施設基準の要約 注意点・ポイント
1 オンライン請求を実施している -
2 オンライン資格確認を行う体制が整っている -
3 歯科医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制が整っている -
4 電子処方箋を発行する体制が整っている
  • 経過措置あり
  • 未導入の場合は記載しない
5 電子処方箋を未導入の場合は導入時期を記載する
  • 4で記載しなかった場合に記載する
  • 未定の場合は空欄でもよい
6 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制が整っている
  • 経過措置あり
7 マイナ保険証の利用実績が一定以上ある
  • 経過措置あり
8 マイナ保険証の利用率を記載する
  • 経過措置あり
9 保険医療機関の見やすい場所に、医療DX推進体制や取り組みについて掲示している -
10 医療DX推進体制や取り組みについて、ウェブサイトへ掲載している
  • 経過措置あり
  • ホームページを所有していない場合は掲載しなくてよい

参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局および様式1の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省をもとに作成

調剤薬局の場合

調剤薬局の場合、医療DX推進体制整備加算の施設基準は以下のとおりです。

医科・歯科にはない「5」と「9」の項目が追加されますが、大枠の内容は変わりありません。

【2024年6月~9月】

番号 施設基準の要約 注意点・ポイント
1 電子レセプトとオンライン請求を実施している -
2 オンライン資格確認を行う体制が整っている -
3 オンライン資格確認等システムを通じて患者の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導等を行う際に当該情報を閲覧し、活用できる体制が整っている -
4 電子処方箋をもとに調剤する体制が整っている
  • 経過措置あり
  • 未導入の場合は空欄でもよい
5 電子で調剤録および薬剤服用歴を管理できる体制が整っている
  • 紙媒体で受け付けた処方箋や文書をそのまま保管するのは問題ない
6 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制が整っている
  • 経過措置あり
7 マイナ保険証の利用率を記載する
  • 経過措置あり
8 保険医療機関の見やすい場所に、医療DX推進体制や取り組みについて掲示し、ウェブサイトにも掲載している
  • ホームページを所有していない場合は記載しなくてよい
9 サイバーセキュリティの確保のために必要な措置を講じている -

参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局および様式 87 の3の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省をもとに作成

「9」の「サイバーセキュリティの確保のために必要な措置」とは、サイバー攻撃に対する対策を含む、適切なセキュリティ整備を指します。

なお、サイバーセキュリティの対策については「疑義解釈資料の送付について(その5)」で推奨されている以下の資料を活用すると、効率的に進められます。

  • 令和6年度版「薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」
  • 「薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル~薬局・事業者向け~」について
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医療DX推進体制整備加算の経過措置

医療DX推進体制整備加算において、国側で準備が整っていない基準に関しては「経過措置」が設けられています。

経過措置期間に該当する項目は、届出の時点で施設基準を満たしていなくても、医療DX推進体制整備加算の算定が可能です。

ただし、それぞれの経過措置期間を超えても施設基準を満たしていない場合は、加算できなくなるためご注意ください。

施設基準の届出様式に沿って経過措置を整理すると、以下のようになります。

【医科・歯科】

番号 施設基準 経過措置期間
4 「電子処方箋管理サービスの運用について」に基づく電子処方箋により処方箋を発行できる体制が整っている 2025年3月31日まで
6 国等が提供する電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制が整っている 2025年9月30日まで
7 マイナ保険証の利用率が一定以上である 2024年9月30日まで
8 届出時点における、直近の社会保険診療支払基金から報告されたマイナ保険証利用率を記載する
10 医療DX推進の体制に関する事項及び情報の取得・活用等についてのウェブサイトへの掲載を行っている 2025年5月31日まで

参考:様式1の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省をもとに作成

【調剤】

番号 施設基準 経過措置期間
4 「電子処方箋管理サービスの運用について 」に基づく電子処方箋により調剤する体制が整っている 2025年3月31日まで
6 国等が提供する電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制が整っている 2025年9月30日まで
7 来局患者のマイナ保険証の利用率を記載する 2024年9月30日まで

参考:様式 87 の3の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省をもとに作成

医療DX推進体制整備加算の届出方法

医療DX推進体制整備加算を算定するには、上述した施設基準を満たしたのちに、地方厚生局長等への届け出が必要です。

医療DX推進体制整備加算の届出書類が手元にない場合は、以下の手順でダウンロードしてください。

  1. 保険医療機関がある地方厚生(支)局のホームページにアクセス
  2. 「申請等手続き」からそれぞれのページにアクセス
    1. 医科・歯科:基本診療料の届出一覧
    2. 調剤:特掲診療料の届出一覧
  3. 一覧からそれぞれの書類をダウンロード
    1. 医科・歯科:別添7「基本診療料の施設基準等に係る届出書」様式1の6「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」
    2. 調剤:別添2「特掲診療料の施設基準に係る届出書」様式87の3「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」

各書類の用意ができたら写しを保管し、管轄の事務所へ郵送にて1部提出します。

医療DX推進体制整備加算の
ポスター掲示例

マイナンバーカードのイメージ
出典:オンライン資格確認に関する周知素材について|厚生労働省

医療DX推進体制整備加算を算定するためには、施設基準にあるように、保険医療機関内に基準を満たす掲示物を貼る必要があります。

厚生労働省のホームページに掲載されている周知素材を使用すれば、効率的に施設基準を満たせるため、ぜひ印刷してご活用ください。

オリジナルで掲示物を作成する際は、掲示物に以下のような内容を含めてください。

  • 医科・歯科
    1. 医師等が診療を実施する診察室等において、オンライン資格確認等システムにより取得した診療情報等を活用して診療を実施している保険医療機関であること
    2. マイナ保険証を促進する等、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいる保険医療機関であること
    3. 電子処方箋の発行及び電子カルテ情報共有サービスなどの医療DXにかかる取組を実施している保険医療機関であること
  • 調剤
    1. オンライン資格確認等システムを通じて患者の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導等を行う際に当該情報を閲覧し、活用している保険薬局であること
    2. マイナンバーカードの健康保険証利用を促進する等、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいる保険薬局であること
    3. 電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを活用するなど、医療DXに係る取組を実施している保険薬局であること

参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局および特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局をもとに作成

医療DX推進体制整備加算の
ホームページ掲載例

医療DXに関する取り組みをホームページへ掲載する際は、以下の例を参考になさってください。

【医療DX推進体制整備加算に関するお知らせ】

当院では医療DXを推進するために、以下の取り組みを行っています。

【当院の取り組み】

  1. (1)オンライン請求を実施しています
  2. (2)オンライン資格を確認するための体制を有しています
  3. (3)オンライン資格確認等システムから取得した診療情報を閲覧・活用できる体制を有しています
  4. (4)マイナ保険証を利用できる環境を整備しています
  5. (5)マイナ保険証の利用に関するポスターを掲示しています

以下については経過措置期間のため、期間満了までに整備する予定です。

  1. (1)電子処方箋を発行する体制
  2. (2)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制

2024年6月の診療報酬改正に伴い、初診時に医療DX推進体制整備加算を月1回に限り8点加算いたします。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

ホームページへ掲載する内容については、医療DX推進体制整備加算のポスター掲示と同様の要件を満たす必要があります。

なお、ホームページを所有していない場合は、掲載しなくても問題ありません。

医療DX推進体制整備加算の取得に
向けた環境整備のポイント

医療DX推進体制整備加算を取得するために施設基準を満たしていくと、さまざまな業務の効率化を目指せます。

たとえば、電子カルテを活用する環境を整えると、紙カルテを探す手間や記入時間の削減につながり、業務効率の向上やオーダリングの迅速化にもつながります。

パソコンだけではなく、タブレット端末やスマートフォンからも電子カルテを活用できれば、より業務効率の向上が見込めます。

以下の資料では、電子カルテの利便性を高めるスマートフォンの選び方を解説しているので、あわせてご覧ください。


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電子カルテの利便性を高める!
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まとめ:医療DX推進体制整備加算の
取得を目指して医療DXを推進しよう

医療DX推進体制整備加算とは、保険医療機関の「デジタル技術によって医療の質を高める体制」を評価する制度です。

施設基準を満たした上で届け出ると、医科では初診時に限り診療報酬に8点の加算が可能です。ただし、2024年10月からは評価区分が新設され、マイナ保険証の利用率をはじめとする実績に応じて点数が変動します。

施設基準を満たすためには、オンライン資格を確認できるシステム・機器の導入や、電子カルテ・電子処方箋を活用できる体制の構築などが求められます。

一方で、医療DXを推進すれば、質の高い医療を提供できるほかにも、業務の効率化や生産性の向上などにつながります。

診療報酬の加算以上のメリットを得るためにも、現場の変革をゴールとして定め、医療DX推進体制整備加算の取得に向けて環境整備を進めていきましょう。


コラム監修者:薬剤師 稲嶺 千春

【参考情報一覧】

参考:様式1の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省 (2024年8月時点)

参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局(2024年8月時点)

参考:様式 87 の3の6医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類|関東信越厚生局|厚生労働省(2024年8月時点)

参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省保険局(2024年8月時点)

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