
モバイルPOSとは?
小売業の課題に対する新しいアプローチ方法を解説
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- 小売店舗におけるスマートデバイスの有効活用
店舗運営で、販売データの記録・管理を効率化できるPOSシステムを活用しているケースは多く見られます。しかし、据え置き型POSレジは、導入コストが高く、設置場所も限られています。
そのため、導入コストが安価で様々な決済方法に柔軟に対応しやすいモバイルPOSに注目が集まっています。何よりの魅力は、スマートフォンやタブレットで利用ができることです。持ち運びしやすく、店舗のスペースを圧迫しないため、小売業界での導入が検討されつつあります。
本記事では、POSシステムの概要からモバイルPOSのメリットや導入方法について紹介します。
POSシステムの概要
ここでは、POSシステムの概要やPOSレジについて解説します。加えて、スマートフォンやタブレットにアプリをインストールして使用できる、手軽なモバイルPOSについても紹介します。
POS(Point of Sale)とは、商品が販売されたタイミングにおける様々な情報を管理することを意味します。そしてPOSシステムは、次のような情報を商品単位で記録し、集計するシステムのことです。
- ● 商品を販売した時間
- ● 販売した商品名
- ● 店舗にある在庫数
- ● 商品の価格
POSシステムに蓄積される情報は、店舗ごとの商品管理に加え、売上や顧客の購買行動の分析まで可能にします。POSシステムを有効活用することで、過剰在庫を減らしたり、新しいマーケティング施策を考案したりといったメリットが生まれます。
POSシステム/POSレジ/モバイルPOSの違い
POSシステム/POSレジ/モバイルPOSの違いは以下のとおりです。
- ● POSシステム:販売管理ができるシステムの総称。主に小売業で採用されており、据え置き型POSレジやモバイルPOSを構成する。商品ごとの売上をリアルタイムで集計し、販売データを記録・分析できる。
- ● POSレジ:POSシステムが導入された販売情報を集積できるレジ。ネットワーク経由でバーコードによる商品登録や店舗在庫の確認ができるだけでなく、他店舗との連携なども可能。
- ● モバイルPOS:POSレジをモバイル化したもの。スマートフォンやタブレットを活用し、無線LAN等で接続する。コンパクトで持ち運びしやすく、POSレジ同様に商品管理や売上集計が可能。
POSシステムとPOSレジ/モバイルPOSを統合的に運用することで、店舗にある在庫数や売れ筋商品の傾向がわかります。そのため、入荷すべき個数をすぐに把握できたり、顧客に喜ばれる販促キャンペーンを打ち出せたりと、店舗運営の効率化や顧客満足度の向上につながります。
特に、モバイルPOSは、スマートフォンやタブレットを利用するため、持ち運びしやすい点が魅力です。シンプルな機能を持ちつつも、在庫状況や顧客情報などのデータにもアクセスできます。
モバイルPOSの主な機能
現在はスマートフォンやタブレットで使えるモバイルPOSのサービス拡大により、店舗スペースを有効活用できたり、店舗外に持ち出して会計ができたりと、便利に活用できるようになりました。次に据え置き型POSレジとの違いを比較しながら解説していきます。

在庫管理
モバイルPOSは、スマートフォンやタブレットで在庫管理が可能です。商品が販売された場合、データがクラウドに送信されるため、在庫状況をすぐに把握できます。小売業における在庫管理で発生しやすい過剰在庫や在庫切れを防止しやすくなります。
レジ機能
モバイルPOSのレジ機能は、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを追加するだけで、簡単かつ柔軟に台数を増やせるため、顧客対応の迅速化やレジ待ちの解消にも貢献します。また、インターネット環境さえあれば、店舗外に持ち出して決済することも可能なので、特定の場所で決済する必要がなくなります。
一方、据え置き型POSレジは、コスト面から手軽に台数を増やせないため、レジ待ちを解消しきれず、お客様の満足度を下げる可能性があります。
クレジットなどのキャッシュレス決済
小売業でよくあるポップアップストアやイベント出展では、現金管理が難しい場合も少なくありません。しかし、モバイルPOSは、クレジットカードやコード決済、キャリア決済といった多くのキャッシュレス決済に対応できます。
キャッシュレス決済は、現金よりもスムーズに会計でき、レジ待ちの減少に貢献することから、顧客満足度の向上にもつながります。
売上の管理
モバイルPOSでは、リアルタイムで売上個数などを共有できます。また、据え置き型POSレジの前でなくても確認できる点もメリットです。バックヤードで在庫数を確認しながら、実際の売上個数と突合させることで、日々の棚卸業務を円滑に進められます。
片手で操作できるスマートフォンやタブレットを利用するモバイルPOSだからこそのメリットといえます。
スタッフの勤怠管理
モバイルPOSは、スタッフの勤怠管理も可能です。リアルタイムでの勤怠の登録・管理は、労働時間を正確に把握することにつながります。
また、据え置き型POSレジにはなかった勤怠管理機能を利用すれば、タイムカードで打刻する手間やタイムカードを集計する手間が減り、スタッフと管理者の負担を同時に軽減できます。
モバイルPOSのメリット
続いて、モバイルPOSのメリットについて解説します。従来の据え置き型POSレジと比較した場合、操作が簡単だったりコストを抑えられたりと、多くのメリットがあります。
据え置き型POSレジに比べて導入コストを抑えられる
モバイルPOSは、据え置き型POSレジと比較して導入コストを抑えられます。据え置き型POSレジでは、専用のハードウェアとソフトウェアが必要でした。しかし、モバイルPOSの場合は、スマートフォンやタブレットにアプリという形で導入可能です。据え置き型POSレジと比較して、導入コストには大きな違いがあります。
据え置き型POSレジを導入する場合、メンテナンスやソフトウェアのアップデートに伴う追加費用も考慮する必要があります。そのため、とくに中小企業や小規模店舗では負担が大きいケースも多いといえます。
対して、モバイルPOSであれば、既存のスマートフォンやタブレットを活用し、周辺機器を組み合わせることで、初期投資を抑えつつ導入可能です。
また、導入費用が気になる中小企業・小規模事業者であれば「IT導入補助金」を活用することも可能です。小売業の場合は、資本金が5,000万円以下、あるいは従業員数50人以下であれば対象となります。(IT導入補助金2024の場合。以下同様)
レジスペースを独占しない
モバイルPOSは、店舗のレジスペースを独占せずに使用可能です。据え置き型POSレジは持ち運びできない一方で、モバイルPOSは小型かつ軽量で持ち運びがしやすいため、使う場所を選びません。
移動型店舗でも使用可能
モバイルPOSは、スマートフォンやタブレットを使用するため、移動型店舗でも活用できます。また、ネットワークをつなげることで、売上データや顧客情報の管理をリアルタイムで行うことも可能です。
混雑時などの一時的なレジとしても使用可能
モバイルPOSは、混雑時には一時的なレジとして活用可能です。店舗内のどこでも決済ができるため、待っている顧客から優先的に決済業務を行えば、顧客満足度の向上につながるだけでなく、売上の機会損失も避けられます。
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モバイルPOSのデメリット
以下にモバイルPOSのデメリットについて解説します。とくに、OSのバージョンによっては、上手く作動しないケースもあるため、アプリとハードウェアの互換性は常にチェックが必要です。
インターネットの環境が必要
モバイルPOSは、インターネット環境が必要です。リアルタイムでのクレジットカード決済や売上管理を行う場合には、安定した通信環境がなければ業務が滞る可能性があります。
OSのバージョンによってトラブルが生じる可能性がある
スマートフォンやタブレットのOSが古かった場合、アプリの互換性に問題が生じ、正常に動作しないケースが考えられます。商品を販売するタイミングで不具合が起きると、アプリが作動せず、売り逃しにもつながりかねません。
また、OSのアップデートによって不具合が起きるケースもあるため、アップデートの情報を事前に確認した上で対応することが大切です。
OSは、iOSと Android TM の両方に対応するもの、どちらかのみに対応するものがあるため、確認が必要です。
自社に合ったサポート体制が必要
トラブルに迅速に対応しつつ業務をスムーズに進めるためには、導入するモバイルPOSサービスのサポート体制を確認することが大切です。
なかには、専門オペレーターが24時間365日対応してくれるモバイルPOSもあります。とくに、初めて利用する場合は重要なサポートだといえます。
紛失や盗難の恐れがある
モバイルPOSはスマートフォンやタブレットに導入されているため、盗難や紛失の可能性があります。たとえば、移動型店舗や店舗外での使用で盗難された場合には、顧客情報や売上情報の流出なども予想されます。
モバイルPOSを利用する場合は、スマートフォン・タブレットのパスワードや指紋認証などのセキュリティ対策が必須です。
また、外部ストレージ/内部ストレージの暗号化に対応していたり、MDM(Mobile Device Management)により不正利用を防ぐための機能制限ができたりと、セキュリティ対策がされているスマートフォン・タブレットを選ぶ必要があります。
充電が切れると使用できない
モバイルPOSの電源は、スマートフォンやタブレットのバッテリーに依存しています。業務を中断させないためにも、バッテリーの消耗速度は常にチェックが必要です。
バッテリー切れに備えて、非常用のモバイルバッテリーや充電器を用意しておくことが大切です。また、電源を落とすことなくバッテリー交換ができる端末や、バッテリー容量が大きい端末を選んでおくことも対策として挙げられます。
モバイルPOSの活用イメージ

活用イメージ1(コスト削減)
POSシステムの導入コストにお悩みの場合は、スマートフォンやタブレットで使えるモバイルPOSの導入をおすすめします。
また、季節によって取り扱う商品が変わったり、販促キャンペーンを毎週打ち出したりするため、手軽に商品登録が可能なシステムとしても、モバイルPOSは有効活用できます。
店舗で接客をしながら、その場で店舗在庫の有無を確認できたり、商品の入荷日を把握できたりと、利便性のよさを感じていただけることと思います。
活用イメージ2(注文管理)
各スタッフが個別で売上を管理し、各商品をどの程度売り上げたのか、店舗にいくつ在庫が残っているかなど、集計が難しい状況にもモバイルPOSが便利です。
モバイルPOS導入により、リアルタイムで管理ができ、在庫数を正確に把握できるようになります。売れた数量にあわせて正確な発注が可能となり、過剰在庫のリスクを軽減します。
また、閉店後に在庫の数量を確認するなど、無駄な時間も短縮できます。モバイルPOSの導入により、据え置き型POSレジの前でなくとも、複数の注文を一元管理できるようになり、業務の効率化へとつながっています。
活用イメージ3(顧客満足度の向上)
商品情報を確認するために、バックヤードまで行く必要がある場合にも利便性を発揮します。
持ち運びができるモバイルPOS導入により、顧客の前で商品情報を確認できるようになります。顧客が求めるサイズや色の在庫があるかどうか、その場で確認が可能です。
店舗のバックヤードまで在庫を確認しにいく手間がなくなるばかりか、顧客を待たせずに済むようになります。こうした対策は、来店した顧客の満足度を向上させ、今後のリピーターを増やすことにつながります。持ち運びができるモバイルPOSならではの特徴です。
モバイルPOSの選定方法
業種に合ったものか
モバイルPOSを選ぶ場合、導入する業種に適したシステムを選定することが大切です。たとえば、小売業では在庫管理や顧客管理機能が重要です。
業種に合ったモバイルPOSを選ぶことで、業務効率の向上や顧客満足度の向上につながります。
店舗環境に合わせてカスタマイズ可能か
モバイルPOSを導入する際には、店舗の運営環境に合わせてカスタマイズできるかどうかを確認します。柔軟に対応できるシステムでは、商品の並び替えやカテゴリ設定、期間限定のイベントなどでも問題なく使用できます。
また、スタッフが簡単に操作できるようなインターフェイスになっているかも確認します。
トラブル時のサポート体制が整っているか
モバイルPOSを導入する場合は、トラブル発生時にどのようなサポートが受けられるのか確認が必要です。たとえば、決済エラーや情報の同期エラーなどが起こった場合、業務が長時間停止する可能性があります。
そのため、トラブル発生後のフローや対応速度、対応時間などは要確認です。加えて、導入時のトレーニングの有無やサポートの対応もチェックしておくことを推奨します。
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モバイルPOSの導入方法
大まかな導入の流れは以下のとおりです。
利用したいアプリやサービスを選定し、サービス提供会社に連絡
機能においては、割引クーポンの発行ができるのか、顧客情報からポイント制度が利用できるかなどが比較対象です。また、アフターサービスにおいては、不具合時の駆けつけサポートがあるのか、電話サポートが充実しているかなどが対象といえます。あらかじめ機能やアフターサービスに優先順位をつけておくことが重要です。
その後、複数社から見積もりを取り、最終的に導入するアプリやサービスを決めます。この際、無料体験キャンペーンなどがあれば、自社の業務と合致するかどうかも確かめられるため、導入イメージを固められます。
また、「IT導入補助金」を利用する場合は、この時点でIT導入支援事業者を選定する必要があります。IT導入支援事業者は、対象となるITツールを提供している企業や、販売している代理店など、サービス提供事業者のことを指します。
「IT導入補助金」の申請
IT導入補助金を利用する場合、IT導入支援事業者と商談を進め、交付申請の手続きへと進みます。交付申請は以下のとおりです。
1. IT導入支援者から「申請マイページ」の招待を受け、申請者の情報を入力
2. 交付申請に必要となる情報の入力・書類添付
3. IT導入支援事業が導入するITツール情報・事業計画値を入力
4. 「申請マイページ」上で入力内容を最終確認後、宣誓を行い事務局へ提出
審査終了後、交付決定が通知され補助事業を開始できます。交付決定前にサービスを発注・契約・支払いなどを完了させた場合、交付を受けられないので注意が必要です。
サービス提供会社から連絡を受けたうえで対応する端末や機器を購入する
サービス提供会社と連絡を取ったあとは、対応した端末や機器を購入します。たとえば、クラウドサービスでも一定のスペックを満たしたデバイスが必須となるケースもあるためです。
IT導入補助金を利用している場合、サービスの発注・契約、納品、支払いなどが確認できる証憑を求められるため、「申請マイページ」から添付して提出します。IT導入支援事業者がその内容を確認後、事務局に事業実績報告を提出する必要があります。
事業実績報告が完了次第、補助金額が確定し交付されます。その後は、事業実施効果報告の提出が必要です。定められた期間内に補助事業者が「申請マイページ」に情報を入力し、IT導入支援事業者の確認を取り、事務局へ提出します。
使用する端末にアプリをインストールする
スマートフォン・タブレットのオンラインストアを利用し、端末にアプリをインストールします。指示された手順に従ってインストールを行い、担当者ごとに権限の付与を行う必要があります。
商品登録後、利用開始
アプリのインストール後は、商品情報の登録が必要です。商品ごとの詳細な情報や価格、在庫数などを正確に入力することで、その後の運用が楽になります。また、初期段階のトラブルや不明点がある場合には、サービス提供会社のサポートを利用し登録を進めます。
まとめ
モバイルPOSは、小売業や飲食業をはじめとする多くの業界で活用されるスマートフォンおよびタブレット内にPOSシステム・アプリを導入したものです。導入コストが低く柔軟な対応ができる一方で、インターネット環境やセキュリティの強化が重要となります。
店舗にあった適切なPOSシステムやモバイルPOSを導入することで、小売業の課題となる在庫管理やレジ待ちの解消が可能です。自社の業務に最適なシステムを導入することは、より効率的な店舗運営の実現に近づきます。
※ Android は Google LLC の商標です。
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