フードロス問題の現状や原因、食品小売事業者が取り組んでいる対策について解説。
フードロスの現状と課題を解説!食品小売業のための対策ガイド
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フードロス問題の現状や原因、食品小売事業者が取り組んでいる対策について解説。
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SDGs(持続可能な開発目標)のターゲットの一つとして設定され、社会全体での取り組みが進んでいるフードロス問題。事業者に課せられていた2030年までの削減目標は、2022年度に達成されたと発表がありました。しかし、日本のフードロスの量は依然として多いのが現状です。さらなる削減が求められた際、現場ではどのような対策を講じるべきでしょうか。
本記事では、フードロス問題の現状や原因、食品小売事業者が取り組んでいる対策について解説し、さらにスマートフォンを活用したソリューションやメリットについてもご紹介します。
「フードロス(食品ロス)」とは、本来食べられるのに廃棄されてしまう食品のことを指します。農林水産省のデータによると、日本では年間2,232万トン(2022年度)の食品廃棄物等が発生しており、そのうち472万トンがフードロスに分類されています。
※合計の記載について、小数点以下を四捨五入により端数処理をしているため、合計値が一致しない場合があります。
フードロスは、家庭からの廃棄が236万トン、事業者からの廃棄も同じく236万トンにのぼり、私たちの暮らしでも食品を扱う企業においても、大きな課題となっています。また、フードロスは単に「食べものを無駄にしている」だけではありません。ごみ処理に伴う経済的損失や環境負荷の増大など、社会全体にさまざまな影響を及ぼしています。
フードロスによる経済的損失は、年間約4兆円にのぼると試算されています(2022年度フードロス量、472万トンを基に推計した場合)。これは、国民1人当たり年間32,125円、1日当たり約88円に相当し、毎日おにぎり1個を無駄にしている計算になります。
食べられるはずの食品が廃棄されることで、生産・流通・販売にかかったコストがすべて無駄になり、事業者にとっても大きな損失となります。食品の仕入れ価格や人件費、廃棄処理費用まで考慮すると、その影響は決して小さくありません。
食品廃棄物の処理には多額のコストがかかります。例えば、2022年度における市町村のごみ処理事業経費は約2兆1,519億円 です。これを国民1人当たりに換算すると、年間17,100円の負担になります。
また、食品は水分を多く含むため、運搬や焼却時により多くのエネルギーを消費し、CO₂排出量も増加します。そのため、フードロスは増えれば増えるほど、地球温暖化を加速させる原因に。なお、100トンの食品ロスを減らすと、46トンのCO₂を削減することができると言われており、 環境負荷の軽減にはフードロス対策が欠かせません。
世の中のフードロス問題に対する関心は、近年ますます高まっています。その背景のひとつにあるのが、SDGsの普及です。SDGsの目標12.3では 「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」と設定されており、国際的にもフードロス削減が重要な課題となっています。
また、消費者庁が2023年度に実施した消費生活意識調査 によると「フードロス(食品ロス)が問題となっていることを知っていますか」という質問に対して、5,000人の調査対象者のうち、8割以上が「よく知っている」「ある程度知っている」と回答。特に「よく知っている」の回答に注目すると、その割合は年々増えており、2021年度の23.1%から2023年度には25.6%へと推移しています。
このような意識の高まりを受け、企業のフードロス対策にもこれまで以上に注目が集まることが予想されます。店舗の大小にかかわらず、フードロス問題に向き合い、できる範囲で適切に対応していくことは、社会的な責任を果たすだけでなく、企業のブランドイメージ向上やプロモーション・集客の強化にもつながるでしょう。
2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律(略称:食品ロス削減推進法)」が施行されてから約6年。あなたの店舗では、フードロス対策は十分にできていますか?
前述のとおり2022年度に発生した事業系フードロスは236万トンで、実は食品ロス削減推進法で掲げていた「2000年度比で2030年度までに食品ロス量を50%削減させる」という目標(273万トン)を8年前倒しで達成しています。しかし、そのロス量の内訳を見ると、目標達成に大きく貢献したのは主に外食産業や食品製造業。食品小売業においては依然として課題が残っていると言えるでしょう。
また、2024年12月には、食品ロス削減推進会議において新たな目標が検討 されており、現在の目標からさらに17万トンの削減が求められる可能性があります。これまで特に対策を講じてこなかった事業者も、より積極的な取り組みが求められる局面が訪れるかもしれません。
食品小売業では年間49万トンのフードロスが発生しています。食品製造業に比べると規模は半分程度ですが、仕入れ・廃棄・人件費を含めたコスト負担は決して小さくありません。フードロスは単なる廃棄問題ではなく、事業者にとっては「売上を生むはずだった商品を失う機会損失」であり、「不要なコストを発生させる経営リスク」でもあります。
対策についてご紹介する前に、食品小売業における主なフードロスの原因を解説していきます。
食品業界では、消費者が購入した後食べるまでの期間などを考慮し、卸売や小売店とメーカーとの間で、店頭でいつまで販売するか(販売期限)や、そのためにいつまでに納品できるか(納品期限)などの期限が習慣的に決められてきました。それが「3分の1ルール」です。この期間を過ぎた商品はまだ食べられる状態であっても廃棄せざるを得ません。
ただし、このルールは法律で定められたものではなく、業界内で自主的に決められたもの。そのため、近年ではフードロス削減の観点から見直しが進められており、一部の企業では「2分の1ルール」への変更や、納品期限の延長といった対策が始まっています。
「できるだけ新しいものを買いたい」という消費者心理が、販売期限の迫った商品の売れ残りを増やし、フードロスを引き起こす原因となっています。
2017年に行われた農林水産省の意識調査によると、消費者が食品を選ぶ際に最も重視する要素は「鮮度」。そして「価格」「安全」が続きます。このことから、昔から日本人の鮮度志向は根強く、食品小売業の仕入れや販売戦略にも大きな影響を与えてきたと考えられます。
在庫が少ないと、売り切れによる「チャンスロス(販売機会の損失)」が発生します。そのリスクを避けるため、食品小売業では在庫を多めに確保する傾向があります。しかし、過剰な在庫は売れ残りを増やし、フードロスの原因に。小売業にとって大切なのは、店舗ごとの「消費ポテンシャル」と「仕入れ・商品陳列・在庫」のバランスを見極め、適切な発注・在庫管理を行うことです。
しかし、近年は「食品価格の高騰による消費者の買い控え」や「猛暑や豪雨などの異常気象」の影響もあり、これまでの仕入れ基準が通用しなくなる可能性も。こうした変化に対応するには、現場担当者の経験や勘に頼る方法だけではなく、過去の販売傾向や市場動向、天候や曜日、消費者行動などのデータを緻密に分析することが重要になります。
では、食品小売業の現場では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。
2024年のスーパーマーケット年次統計調査によると、フードロス削減の取り組みとしては「値引きによる売り切り推進(94.0%)」「発注の精度向上・需要予測型の発注(51.7%)」「少量販売・小口販売の推進(41.6%)」の3つが上位に挙げられていました。賞味期限が近い食品やパッケージが汚損した商品の割引は、手軽に始められる施策のため、多くの店舗で実施されていることがわかります。また、最近では「てまえどり」など、消費者の協力を促すPOPも目にするようになりました。しかし、消費者の行動に依存してしまう施策には課題もあります。
例えば「てまえどり」については、「知っているが実践していない」という層が全体の40%を占めるという調査結果があります。フードロス削減の意識は高まっているものの、消費者の過度な鮮度志向は根強く、実際の行動にはまだ結びついていないのが現状です。
こうした状況を踏まえ、事業者が主体的に取り組める対策として注目したいのが、51.7%の事業者が回答した「発注の精度向上・需要予測型の発注」。現在、さまざまなテクノロジーの進歩により、現場の担当者に特別なスキルがなくても、精度の高い発注や在庫管理の最適化が可能になりました。今後は、AIやスマートフォンなどのデジタル技術の活用が、フードロス削減と利益向上を両立させる有力な手段となるでしょう。
特別な設備や専門知識がなくても、普段から使い慣れたスマートフォンを活用することで、業務を効率化しながらフードロス削減と利益向上を同時に実現できます。
バーコードリーダー機能付きのスマートフォンで入荷商品をスキャンするだけで、即座に管理システムへ反映。リアルタイムで在庫状況を可視化でき、適切な仕入れ判断に役立ちます。
さらに、商品検索や価格照合といった業務もスマートフォンで完結できるため、店頭での作業効率が向上し、担当者一人で対応できる範囲が広がるのが大きなメリット。データに基づいた管理により、人為的なミスも削減でき、より正確な在庫管理が可能になります。
従来の発注・在庫管理は、経験豊富な担当者のスキルや経験、勘に頼る部分が大きく、業務の属人化が課題となっていました。しかし、「AIによる需要予測」や「直感的に操作できるUI/UX」を取り入れたシステムやアプリを活用することで、特定の担当者に依存しない、安定した仕入れ業務を行える環境が整います。
人材不足や担当者の急な退職といったリスクにも柔軟に対応でき、組織全体で業務の標準化が進むというメリットもあります。
店内に設置したタブレットのカメラを活用することで、AIによる顔認識が可能になり、来店客の属性や表情、人流データを定量的に分析できます。これにより、売上動向や顧客の好みを簡単に把握でき、ターゲットに合わせた効果的な販促施策やサービス改善が可能に。よりパーソナライズされたマーケティングを実施することで、廃棄リスクの軽減にも貢献します。
冒頭でもお伝えした通り、フードロス問題は社会的な関心が高まっている上に、新たな削減目標も検討されています。今後、企業にはより積極的な対策が求められるようになるでしょう。今こそ、テクノロジーを活用して、フードロス削減と利益向上を両立する仕組みを整えてみてはいかがでしょうか?
京セラでは、現場に最適なスマートフォンの導入はもちろん、各事業者の課題に応じたソリューションの提供が可能です。フードロス問題に取り組みながら、「業務の効率化」「コスト削減」を実現したいと考えている方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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