社用スマホの導入を検討する方に向け、メリットや留意点、導入のためのステップを解説。
社用スマホ(社用携帯)は必要?導入すべき理由と5つのメリット
高耐久スマートフォン / スマートフォン
社用スマホの導入を検討する方に向け、メリットや留意点、導入のためのステップを解説。
高耐久スマートフォン / スマートフォン
リモートワークやモバイルワークの浸透により、社員がオフィス外から業務に対応する働き方が定着しつつあります。その際、社員が個人で所有しているスマホ(個人スマホ)を利用するケースが少なくありません。
個人スマホの業務利用は、社員にとっては使い慣れた端末による作業効率の向上、企業にとっては端末の購入・維持のコストを削減できるというメリットがありますが、セキュリティリスクやコンプライアンス上の問題が避けられません。
そこで本記事では、社用スマホ(社用携帯)の導入をご検討の方に向けて、社用スマホのメリットや導入する際の留意点、円滑に利用するためのポイントについて解説します。
自宅や外出先、移動中など、オフィスにいなくても社内システムや情報にアクセスできるようになり、場所を問わずどこでも業務ができるようになりました。その一方で、サイバーセキュリティ上の脅威も増大。2024年に観測したサイバー攻撃関連通信の1IPアドレス当たりの年間総観測数は242万7977パケット。2015年からの10年間で約10倍に増加し、過去最高数を記録しました。
特にサイバー攻撃の中でも、社内データを人質に身代金を要求する「ランサムウェア」の被害が多発。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」でも10年連続で上位にランクインしています。
攻撃手段は年々巧妙化し、近年は社内サーバーへの攻撃の踏み台として、不正アプリのインストールやフィッシングメールなどでスマホをハッキングするケースが増加しています。
そのターゲットとなりうるのが、業務利用している個人スマホです。業務中はその脅威を意識し注意できますが、一旦、業務から離れると警戒心が緩み、うっかり不正アプリをインストールしてしまうなどのリスクがあるためです。
一個人の被害が企業に甚大な損害をもたらし、大きく信用を失わせてしまう。そんな危機に直面している今、業務とプライベートでのスマホの使い分けを検討する企業が増えています。
個人スマホの業務利用は、サイバー攻撃の脅威にさらされるだけでなく、人為的な要因により深刻な被害を引き起こす危険性もあります。例えば、休日に個人スマホに保存された膨大な企業データを持ち歩き、外出先で紛失や盗難に遭うケースです。
万が一、情報漏えいといった事故が発生しても、個人スマホは社員のプライバシーを侵害するおそれがあり、十分な調査ができず原因を究明できないことがあります。
さらに、セキュリティ関連以外にも、個人スマホを業務利用すると公私の区別がつきにくくなるため、労働時間の把握・管理が困難になります。業務時間外に着信がありストレスになる、未払い残業の温床となるなど、労務トラブルにつながるケースも珍しくありません。
社員が個々で契約した個人スマホと、法人名義で契約した社用スマホでは、契約名義や請求方法など、さまざまな違いがあります。
| 比較項目 | 個人契約(個人スマホ) | 法人契約(社用スマホ) |
|---|---|---|
| 名義 | 個人 | 法人・団体 |
| 審査基準 | 個人の年収、勤続年数、信用情報など | 会社の事業年数、資本金、売上高、決算状況など |
| 料金プラン | 個人の利用状況に合わせたプランから選ぶ | 法人向けの割引などがあり、基本料金などが安価になる場合が多い。複数台契約でさらに割安になることもある |
| ビジネス向けのサービス | ビジネス向けのサービスやサポートは基本的にない | ビジネス用メールアドレスや、情報漏えいリスクを回避するためのセキュリティ対策など |
| 管理 | 契約者が個別に管理する | 複数回線を一括で管理でき、利用状況の確認や契約内容の変更をまとめて行える |
| 経費処理 | 業務で利用した分のみ経費計上するため、プライベート分と区別する必要がある | 全額を経費として計上でき、また複数台を一括請求できるので経費処理を簡略化できる |
特に、料金プランに大きな違いがあります。個人スマホはデータ通信量に応じたプランから選び、割引制度も「家族割」や「長期契約割引」が一般的です。一方、社用スマホは複数台の契約を前提としたプランであるため、「複数回線割引」や「同一法人内通話の無料化(定額化)」、複数回線で通信容量を分け合える「データシェア」などで通信費を大幅に削減することが可能です。
社用スマホを導入することで、システムによるセキュリティ対策の強化と、社内ルールによるコンプライアンスの徹底を図る体制づくりを構築できます 。
例えば、MDM(※1)ツールを活用することで、アプリのインストールを制限できるなど、企業のセキュリティポリシーに合わせた利用環境を構築できます。また、紛失・盗難時にスマホを不正操作されないようリモートでロックやデータ消去も可能。大切なデータを企業でしっかり管理することができます。
さらに、退勤時に社用スマホを会社に保管する、社外へ持ち出す際は承認を得るなどのルールを設けることで、データや情報の持ち出しによるリスクも軽減できます。
万が一、コンプライアンス違反が疑われたとき、企業が管理する社用スマホであれば、必要なデータを適切に保全し、調査や監査に応じることもできます。
共通のビジネスツールやアプリをインストールした社用スマホを社員が使用することで、情報共有が円滑になり、顧客へ迅速に対応することができます。
また、契約キャリアや端末メーカーのサポート窓口だけでなく、社内にも対応窓口を設置することで、スマホの故障といったトラブルが発生したときは、すぐさま代替機を提供できるなど、業務の妨げ、いわゆるダウンタイムを最小限に抑えられます。
複数の回線を一括契約するため、複数回線割引などを活用し、1台あたりの通信費用を抑えながら全社員に社用スマホを配布できます。
さらに、MDMツールを使うことで、社員一人ひとりの利用状況をモニタリングできます。これにより業務内容に最適な契約内容や料金プランを検討でき、各業務における通信量の最適化を図れ、無駄なコストを削減することができます。
また、社用スマホは通信費の請求をまとめて行うことができます。社員の個人スマホそれぞれに対応していた煩雑な経費精算から解放され、作業の簡略化も図れます。
社員の公私を明確に区別できます。退勤時はスマホを会社に保管する、業務時間外や休日は電源をオフにするといったルールを設けることで、社員のプライベートをしっかり確保。ストレスの軽減、ワークライフバランスの実現を図れます。
ほかにも、通信費の自己負担や個人スマホの業務利用に抵抗を感じ、「社用スマホを支給してほしい」と考えている社員の要望に応えることで、会社への信頼や従業員満足度の向上が期待できます。
また、社用スマホにMDMツールを導入することで「社員がいつ・どれくらいの通信量を使ったのか」を会社は把握できますが、メール本文や通話内容といったプライバシー性の高いやり取りは原則として確認できないようになっています。そのため、情報漏えいといった事故が発生し、社員が使っていた社用スマホを調査するとなった場合でも、社員のプライバシーを侵害するおそれはありません。
社用スマホを導入すれば、通話やメールだけでなく、チャット、Web会議、ファイル共有など、さまざまなコミュニケーションツールを使うことができます。これにより口頭や文字だけでは伝わりにくい情報が正確に伝達でき、認識の齟齬を防ぐことができます。
このように社用スマホを全員に配付することで業務に必要な情報共有がスムーズに行えるため、お互いの状況を把握しやすくなり、チームの一体感や組織力を高められます。
スマホ本体、MDMツール、チャットなどのアプリを導入する費用がかかります。加えて、新しいツールや運用ルールに関する社員の教育コストも必要になります。
【対策】
社用スマホは、業務時間外や休憩中に業務に関係のない動画を閲覧するなど、私的利用されるリスクがあります。データ通信量の超過による速度制限や、不正サイトへのアクセスでウイルスに感染する危険性を避けるため、定期的な利用状況の確認が必要です。ただし、過度な監視やルールの厳格化は、社員のストレスやモチベーションの低下につながります。
【対策】
社用スマホ導入後、故障対応、費用対効果の定期評価と契約内容の見直しなど、運用・管理業務が新たに加わります。また初期導入時は、キッティング(スマホの初期設定)や操作方法などの問い合わせに追われる可能性があります。
【対策】
外出先や移動中などで、不注意による置き忘れ、社用スマホを入れたカバンの置き引きといったリスクがあります。リスクによる被害を最小限に抑えるため、紛失・盗難に遭ったときの対策を講じる必要があります。
【対策】
まず、社用スマホ導入により解決したい業務上の課題を洗い出し、「なぜ社用スマホを導入するのか」という導入目的を明確にしましょう。次に、経営層、運用・管理する側、現場担当者が議論を交わし、「どのような機能・性能が必要か」「どのように運用するか」「安全に運用するためにどのようなルールを定めるか」といった具体的な要件を定義することが重要です。
用途や予算、求める要件によって組み合わせが異なります。
| Android | iOS(iPhone) | |
|---|---|---|
| 特徴 | 多様な機種・価格帯 高いカスタマイズ性 Android Enterpriseによる管理 |
直感的かつシンプルな操作性 高いセキュリティ 安定した長期サポート |
| メリット | 機種モデルの選択肢が豊富 用途に応じて最適なハードウェアを選べる |
日本国内でのシェアが高く利用者が多いため、社員への教育にかかる負荷が軽い OSアップデートが長期間保証される |
| デメリット | 機種やメーカーによってサポート期間が異なる 管理が複雑になりやすい |
初期導入コストが高め 機能のカスタマイズ性が低い |
| 推奨企業 | 予算に合わせて機種を選びたい企業 特定の業界向けアプリや機能が必要な企業 |
操作の統一性を求める企業 iPhoneユーザーが多い企業 |
通信キャリアは、「ドコモ」「au」「ソフトバンク」「楽天モバイル」などから選びます。キャリアによって、屋内・地下・郊外での通信品質、料金体系、サポート体制が異なるので、自社の要件に合った最適なキャリアを選びましょう。
機種の選定においては、業務内容に合った機能やスペック、コストパフォーマンスを考慮することが重要です。例えば、現場作業が中心の場合は、耐久性や堅牢性、バッテリー性能の高いものがいいでしょう。
京セラでは、物流や建設など過酷な現場環境に最適な高耐久スマホ Dura Forceシリーズを取り扱っているほか、使いやすいデザインと長く使える耐久性能を両立したDIGNOシリーズなど、幅広い業界の要望に応えられるスマホを用意しています。まずはお気軽にご相談ください。
社用スマホのセキュリティポリシーと運用ルールの策定には、基本方針の決定から始め、社用スマホの利用やセキュリティ設定、緊急時の対応など、具体的なルールを決めます。
策定したルールは社員へ周知・教育を行い、定期的に見直すことが重要です。
社用スマホを導入する上で、スマホを効率的に管理できるMDMは欠かせないツールです。MDMを利用することで、複数のスマホの一括設定、社員の利用状況の確認、さらに遠隔操作によって紛失・盗難時の情報漏えいリスクを回避することができます。
京セラでは、他社パートナーのMDMを利用できるほか、京セラ製簡易MDMも提供。詳しくはこちらをご覧ください。
ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルは、個人事業主でも法人契約が可能です。ただし、契約の際に提出する書類がそれぞれ異なります。
スマホ本体代も通信費も経費として計上できます。社用スマホは業務専用のため、通信費の全額を経費にできます。また、スマホ本体代は購入金額(総額)によって処理方法が異なります。青色申告している中小企業の場合、「少額減価償却資産の特例」を使うことができ、30万円未満なら全額を経費に算入できます。ただし、30万円以上になる場合や、先の特例枠(年間300万円)を超えた場合は、減価償却が必要です。(2025年12月現在の情報です)
社用スマホのOSは、原則として「Android」か「iOS(iPhone)」のいずれかに統一すべきです。混在すると、操作説明やトラブル対応、セキュリティ設定などの管理コストが倍増してしまうおそれがあるからです。また、コスト削減のために型落ちモデルを選ぶ際は、OSのセキュリティアップデート期間が残っているかを必ず確認しましょう。そのほか、業務内容に応じた適切なストレージ容量や、現場で使いやすい生体認証(顔・指紋)を選ぶことも重要です。
退職者の社用スマホを初期化し、新入社員に引き継ぐことができます。コスト削減のため、多くの企業で行われている運用方法です。
リモートワークの普及により働き方が多様化する現代において、社用スマホの導入は単なる「通信機器の支給」にとどまらず、企業の守りと攻めを同時に強化する重要な経営判断と言えます。
個人スマホの業務利用はコスト削減などのメリットがある反面、巧妙化するサイバー攻撃へのセキュリティ対策や、隠れ残業などの労務管理において大きなリスクを抱えています。これらを解決し、強固なセキュリティ体制とコンプライアンス遵守を実現できる点が、社用スマホ導入の最大の価値であり、企業の成長と社員の働きやすさを支える「戦略的投資」です。まずは自社に最適なプランや機種の検討から始めてみてはいかがでしょうか。
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