Facebookアーカイブ
稲盛に関するエピソード「経営理念の確立」

「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」
今年創業60周年を迎えた京セラでは、この経営理念を実現すべく今日も一人ひとりの従業員が懸命に仕事に取り組んでいます。実は、この理念は創業時から定められていたものではありませんでした。その誕生にはどのようなきっかけがあったのでしょう。稲盛は次のように振り返っています。
京セラ創業当初の目的は「稲盛和夫の技術を世に問いたい」というものでした。しかし、創業3年目の春、前年に採用した新入社員が、「将来にわたって、昇給は最低いくらすること、ボーナスはいくら出すこと」などの待遇保証を求めて団交を申し入れてきました。三日三晩かけた話し合いの末に彼らも理解し、要求を撤回し会社に残ってくれましたが、このことで企業経営の根幹に気づくことができました。
当時は経営者である自分自身でさえ明日のこともわからない。それにもかかわらず、従業員は何年も先までの待遇改善を期待し、家族まで含めた将来にわたる保証を会社に求めているということを、この出来事で初めて知りました。そして、企業を経営するということは、「現在はもちろん、将来にわたっても従業員やその家族の生活を守っていくということである」と気づいたのです。
この経験から、経営とは、経営者が持てる全能力を傾けて、従業員が幸福になれるように最善を尽くすことであり、経営者の私心を離れた大義名分を企業は持たなくてはいけないという教訓を得ることができました。
(2007年社内講話より)
今般、稲盛ライブラリーでは企画展2019「経営理念―京セラの原動力―」を開催し、経営理念のもつ力を様々な視点から解説紹介しています。(稲盛ライブラリー5階にて10月末まで開催)